世の中には二種類の人間たちがいる。スケートが上手に滑れる人たちと、そうでない人たちだ。私は当然に後者に属する。スケートに行こう、と思うのは、大体が前者に属する人たちなのだが、不思議な因果で、江戸川区スポーツランドのスケートリンクへ遊びに来た。
説明すると、ある日、子供が傘をバスへ忘れた。バス会社へ子供が問い合わせると、バス営業所で預かっているそうで、それが江戸川区スポーツランドの前にある。せっかくなので、ついでにスケートリンクに行こう、ということになった。貸し靴込みで820円、子供420円は安い。1日中、滑ることが出来る。結局、そんなには疲れて滑れないのだけど。
スケートというものは、意外なもので、何の変哲もない普通のオジサンが（失礼、私もそうなのだが）、ものすごい上手なスベリをしていたりする（私はそうではない）。パチンコ屋から出てきそうな古いジャンパー姿の老紳士が、後ろ滑りでスイーっと見事に進む。小柄なオバサンがスピンをキメる。まことにたいしたものだ、と思う。華麗なる日本のスケート界のお姫様や貴公子たちは、こうした庶民の一般的な文化力によって支えられているのだろう。
そういう私は、３度はスベって転び、尻とヒザが痛い思いをした。だが、転ぶほどに、何となくだが、リラックスできるようになってくる。まるで上手に滑れた前世での感覚が戻ってくる気がした。子供のほうが上達が早い。おっとっと、という状態ながらも、何とかしながら、スイスイと滑っている姿を見るのは楽しい。昼ご飯は場内スタンドのきつねうどん。脚は疲れたが、いい機会になった。
