西新橋 ヘッケルン

虎ノ門駅から徒歩五分程度の、老舗の珈琲屋さん。特性のプリンが有名だということを、モーニングセットを注文したあとに知った。初老のマスターが軽快に注文を受けてくれた。昭和の新橋を感じる、落ち着いた店内だ。

平日の朝九時、霞が関でのお仕事があり、少し早めに着いて、近くを散歩した。新橋から虎ノ門にかけては、昔からのお店が多いようだ。モーニングセットの相場が400円程度である。お客さんは私一人だったが、やがて常連さんが入店し、先週末の競馬レースの話題に花が咲いた。

知り合いから信州りんごが送られてきた、という年配の男性のお客さん。箱を抱えて、「この間、競馬が好きだといった女の子が来てた。彼女に渡そうと思って。」最近は競馬好きな女子も多いそうだ。しばらくして、妙齢のご婦人が入店。りんごの包みを受け取った。お二人の暖かい会話が聞こえてくる。スタバでは体験し得ない雰囲気だ。

ラジオよりも大きな音量でお二人の会話が聞こえる。競馬の結果、マスターのフレンチ時代の話、相撲取りの暴行事件の話。40年を超える歴史あるこの店内では、どのような会話が交わされてきたのだろう。チェーン店では聞こえてこないBGMである。

もうすぐクリスマス。朝はめっきりと冷え込み、コートが手放せない。なんてコーヒーが美味しいんだろう。ゆっくりと淹れてくれる。ラジオからはNHK番組の、バリトンサクソフォンの独奏プレリュードが流れてくる。重厚な音の調べが、深い味わいのコーヒーに合う。虎ノ門には新しい高層ビルが立ち並び、新しい地下鉄の駅もできるそうだが、こういう雰囲気は残ってほしい。

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