高知出張も最終日。一通りの交流会が終わって、二次会への流れを逆行するように、私には一つの仕事が待っていた。「明日の朝、ホテルから空港へ向かう、タクシーを手配すること。」東京での生活が長く、高知の事情をほとんど把握していなかった私は、「タクシーは、電話すれば、大体5分くらいで来てくれる」という常識のみを持ち合わせていた。それが、甘かったことに、気がついた。
まず前提条件として、当社のタクシーチケットは「個人タクシー」のみを呼ぶことができる。東京個人タクシー協同組合、いわゆる「でんでん虫」の個人タクシーだ。高知にも、高知個人タクシー協同組合、というのがあり、東京のチケットは全国共通で使える。インターネットにも0120で始まるフリーダイヤル配車番号が書かれていた。
金曜日の午後8時頃。夕食会が終わり、さて、明日のタクシーを予約しようかな、とフリーダイヤルに電話すると、「営業時間を過ぎています。土日祝日を除く、朝9時から夕方5時までに、かけてね」という爽やかに突き放した女性の自動音声が流れてきた。そんな。週末の夜こそ、タクシー会社は配車に重点サービスすべきではないだろうか。しかし、それは東京だけの常識だったのかもしれない。同僚たちはすでに、ちかくの飲み屋街「ひろめ市場」に繰り出していた。
フリーダイヤルではない番号を電話しても、同じ音声に突き当たった。それでは、高知個人タクシー協同組合に所属している個人のタクシー運転手に電話をかけよう、と思ったが、いくつか検索で探せる電話番号は、携帯電話ではなく、明らかに個人タクシー運転手の自宅の番号で、グーグル地図にも、ご自宅と思われる民家の写真しか、掲載されていない。夕食の最中の一般家庭に「明日の朝、ホテルまで配車をお願い」というのも、野暮な気がする。
仕方が無い。ホテルのロビーに「タクシーの集まる場所は、どこですか」という間抜けな質問をしたところ、飲み屋の通りの周辺に、たくさん停車していますよ、という。「でんでん虫」個人タクシーのタクシー灯を探しに、夜の街に繰り出したのは、午後九時。一時間ほど探し、停車中の「でんでん虫」を見つけ出し(なかなか、いないのだ)、窓をコンコンと叩いて、お願いするも、「すまんな。朝は、走らないんだ。他を当たってよ」という回答。
それが2件続いた。それはそうだ、今、仕事しているのだから、朝は寝るはずだ、とあきらめかけていた3件目に、まじめそうな壮年の男性の運転手が、OKしてくれた。良かった!タクシーカードをいただき、携帯番号を伝え、なんとか目処がついたのが、午後10時過ぎだった。帰り道、酔っ払っている上司たちに、路上の飲み屋の前で偶然に会い、明日の集合時間を伝えるに至った。やれやれ。
そんな帰り道、コンビニのセブンイレブンに立ち寄って、一人で部屋で飲むのにふさわしい冷や酒を探しているときに、目にとまったのが「酒王、土佐の鶴」である。緑色の瓶は、「酔鯨」のようだ。土佐の鶴には、創業二百有余年、高知の地酒メーカー、土佐鶴酒造のお酒。普通酒で、酒パック(鶴パック、というそうだ)には、青色の「良等」、赤色の「上等」などのランクがあるようだ。飲んでみて、普通に、美味しかった。
写真は、「ひろめ市場」の中の様子。昼休みの休憩時間に、散歩がてら、立ち寄ってみた。昼間だというのに、生ビールをジョッキでゴクゴクと美味しそうに飲む、老若男女の姿があった。全体的に安くて、揚げ物や醤油など、美味しそうな匂いが漂っていた。今回はチャンスを逃してしまったけれど、次回こそは、必ず、飲み食いをしに、訪れてみたい。