「バッタを倒しにアフリカへ」研究への情熱を感じます

バッタ研究者である、前野ウルド浩太郎さんの作品です。バッタ研究を志して、単身で西アフリカのモーリタニアへ渡った著者の、研究を続けるための活動日誌が生き生きと描かれています。

食糧危機に直結するバッタ問題を解決しよう、といった形式ばった心構えが語られないところに、共感が持てます。作者は「バッタが好き」という純粋な理由で動いています。本来、仕事にせよ研究にせよ、そういうものであると思います。好きなことをする。これが一番です。

論語に「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」(これを知る者はこれを好む者に如かず)という言葉があります。「あることに対して知識がある人も、そのことが好きな人には及ばない。それを楽しんでいる人には、さらに及ばない」といった意味です。作者は、バッタが好きで、バッタ研究を楽しんでいます。これに勝る適正は無いと思います。

研究支援の立場から一言いわせてもらえば、「日本では計画書通りに研究を進めないと、遂行能力が欠如した「劣等生」の烙印をすぐさま押されてしまう。」ということは、無いと思います。計画以上の成果が見込める時には、研究計画書の修正も必要です。

後半は特に、「無収入の研究者」であることが前面に出すぎている気もします。「自分の中で、無収入は今や武器になっていた。無収入の博士は、世の中にはたくさん存在する。だが、無収入になってまでアフリカに残って研究しようとする博士が、いったい何人いるのだろうか。無収入は、研究に賭ける情熱と本気さを相手に訴える最強武器に化けていた。」研究を続けるには、何でも活用しよう!というバイタリティが感じられます。研究を応援したくなる作品です。

作者  前野ウルド浩太郎
出版日 2017年5月17日
出版社 光文社新書
頁数  378ページ
価格  1,012円
詳細  アマゾンの紹介ページへ

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