坂の上の雲 二 司馬遼太郎

表紙絵の街の雰囲気が、優しい。

明治維新後の日本を背景に、2人の軍人と1人の文人の生き方を追う、長編小説の第2巻。日清戦争に勝利し、義和団事件を経て、日露戦争の足音が近づいてくる。海軍の本場である英国へ渡航する弟の秋山真之、騎馬を学ぶためにフランスへ赴く兄の秋山好古。病気が進行して辛い体調にあるも、俳句と短歌の文化樹立のために筆耕を続ける正岡子規。3人に共通するのは、前向きな明るさ、楽天的な性格、重要事項への選択と集中、と感じる。それぞれの道を交差しながら物語は進められていく。

この小説で気がつくことの一つは、教育の大事さだ。明治維新をリードした薩摩、長州、土佐藩の出身者に負けじと、各藩がしのぎを削るように、教育体制を構築していく。学校の先生を一人、招へいするのも大変だ。主人公たちの出身である松山藩が、次代を担う若者を必死になって養成しようとする体制作りの姿勢からも、学ぶべきことが多い。

軍隊も多くを外国から学ぶ。積極的に学ぶ。陸軍ははじめフランスから学び、やがてフランスを妥当したドイツから学ぶ。ドイツは「軍隊のために国がある」と記載されるほど、合理化した軍隊ルールを採用。フランスとの対比分析も面白い。海軍は、英国から学ぶ。戦艦も殆どが英国製。英語、フランス語、ドイツ語を自在に使いこなす必要がある。若い士官たちの学習意欲や、適応性の高さも、見上げたものである。

正岡子規と夏目漱石とのやりとりも面白い。記録に残っている当時の両者間のやりとりを引用しつつ、作者の司馬遼太郎による解説ぶりも、良い点を突いているて小気味よい。陸軍、海軍、文論、という3人の異なった立場から、多彩に変革する明治時代の後半を生き生きと描いている。

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