続・森崎書店の日々 八木沢里志

神保町の古書店街を舞台にした、心温まる人々が織り成す、優しく暖かな日々を綴った、前作の続編です。素直で優しく少し抜けている貴子さん、人当たりが良く少し変で飄々としているサトル叔父さん、サッパリ快活で人当たりの良い桃子叔母さん。古本屋「森崎書店」や、喫茶店「すぼうる」を取り巻く人々の日常を、前作よりも少し掘り下げるような導入で進み、後半では前作の伏線を踏まえた物語のクライマックスへと発展していきます。最後まで興味深く読み進めることができる、前作と同じくらい面白い作品です。「黄金色の夢」という本の存在も面白いです。

作品を通して、人それぞれの事情はあるけれど、今を生きることの大切さが、しんみりと伝わってきます。八木沢里志さんは男性の作者でしょうが、主人公である貴子さんの心理や行動の描写がとても上手。内向きな性格で、小さい頃から感情を相手にストレートに伝えることが苦手な主人公が、「自身の気持ちを言葉で伝える」ことの大切さを、心温かい人たちとの出会いや、様々なイベントを通して学んでいき、それを他の人にも伝えられるようになっていきます。自分も一緒に、成長していくような気にもなります。

八木沢里志さんは、2009年に「第三回ちよだ文学賞」でデビューした本作品と、他の一作品しか執筆していないようです。ご本人も神田神保町の界隈に多く出現しているようで、神保町にある「神田伯刺西爾」(かんだこーひーぶらじる)に良く出没している、というふうに紹介されています。今も次回作に向けて、神田神保町で執筆中なのかもしれません。ぜひ神保町の喫茶店で読みたい一冊です。

続・森崎書店の日々 (小学館文庫)
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