筆者は、もとNHKニューデリー支局長。さすがは本職のジャーナリストだけあって、テンポよく進む文章と全体構成は、読んでいてもさほど疲れを感じさせない。今のインドを理解するのに、これほど分かりやすい書籍は、他には中々、見当たらないと思う。インド出張に先立って、予習のつもりで、読んでみた。
本書は、インドのモディ首相の政策を追いつつ、文化や外交も含めて、今のインドの状況を、とても分かりやすく解説している。インド北西部にあるクジャラート州は、モディ首相の出身地。クジャラート州の首相としての成功体験「クジャラート・モデル」。工業団地、安定した電力供給基盤(インドではよく停電が起こる)を整備し、積極的な営業活動で、内外から大々的に投資を誘致した。スズキやフォード、タタなどの工場が次々に立ち並び、道路インフラも整備された。途中で面白いコラムをはさみながら、インドの状況が軽快に理解できる。
「クリーン・インディア」、トイレ革命-モディ首相は1億個のトイレを作った。人口13億人のうち、3億人がまだ野外で排泄している、という。汚職歴がなく「清潔な政治家」としてのクリーンなイメージを印象付ける目的もあるが、感染症の予防などの衛生問題に直結する、地味ながらも大事なテーマだ。