地下鉄の岩本町駅を上がると、人の波は秋葉原駅昭和口の方へ流れていく。神田川を渡る少し手前で横道に入ってみよう。珈琲喫茶アカシヤがある。
昔からあるような、昭和のレトロな感じが漂う。一つ通りに入っただけなのに、こんなにも静かになる。暖炉色の照明と、抑え気味の音楽が心地よい。店内には2階へ上がる階段がある。見上げると木製の手すりが見え、その向こうはいくつかの席があるようだ。趣のあるモダンな天井が見える。
綺麗な白いユリとトルコキキョウの花瓶が飾られたカウンターでは、妙齢のご婦人がコーヒーを淹れてくれている。もう一人のご婦人が運んでくれる。全体としてのんびりした雰囲気て落ち着く。トーストセットを注文してしばらく、小さな声で「油断しちゃった」と聞こえた。謝りながら少し焦げたトーストが出てきたが、ご愛嬌だ。バターといちごジャムをたっぷり塗って食べる。ビターな味わいがある。
ブレンドコーヒーはスッキリとした味わい。土曜日のちょうど正午。次々とお客さんが入ってくる。チーズトーストください、という声がよく聞こえてくる。次はそれにしてみよう。お客さんが増えてきたので、藤で編んだ椅子席を立ち、アンティークなレジスターで支払いを済ませる。神田川沿いには昔ながらの喫茶店がまだ残っているようだ。散歩がてらに出逢いたい。
