大雪が吹雪く12月末の青森。歩いて来ること自体が一つの大冒険的なクエストでした。極寒の雪道(でも結構楽しい)を乗り越えて、やっとたどり着きました!三内温泉(さんないおんせん)。新青森駅からも距離的には近い場所にあるのですが、雪のせいもあり、ほとんど山の中の秘湯のような佇まいです。
年末とはいえ、平日の午前中だけあって、駐車場のクルマの数もまばらです。真っ白な雪をかぶった大きな木が、まるで天然のクリスマスツリーのよう。トナカイが飛び出して来そうです。近づくにつれて、硫黄の香りが、ホワッと漂います。
スパ・サンナイと書かれた、何となく昭和的なおしゃれ感があるエントランスです。扉を開くと、背中から猛烈な吹雪が入り込んできます。年配の女将さんが、出迎えてくれました。今日は、朝方からずいぶんな吹雪ですね…といった感じで、ご挨拶。エントランスに入ると、本格的な硫黄の香りが、ふわーっとやってきます。これです。この感じ、まさしく青森の秘湯に求めていた「温泉感」でした。
脱衣場へ続く扉を開くと、清潔ですが、とてもガラーンとしたオープンな空間があります。棚には鍵がなくて、ロッカーが存在していた場所には、ロッカーという張り紙の他(はがし忘れ?)があるだけ。ほかに何もありません。 貴重品は入り口ホールの女将さんにあずけることもできます。 財布とスマホを念のため、先程の女将さんに預かってもらい、空いている棚に衣服を詰め込んで、いざ、温泉へ!ガラガラと扉を開くと、湯気に包まれた硫黄の香りが、遠慮なく広がってまいります。
なんというか…幻想的な大浴場です。エメラルド的なミルク色の湯船が、湯気に包まれて見えなくなった、浴場の向こう側にまで、ずっと続いているようです。右手には、女湯との境目である高い壁があり、その壁の上部から、滝のようにドドドドッとお湯が流れ落ちています。不思議な壁の模様は、遠目には、縄文人が洞窟に描いた狩猟の様子のようにも見えます。硫黄の香り、濛々とした湯気、不思議な壁画、滝の落ちる音。ここはどこだったかしら。
ドーム状の天井を見上げると、これは木製でしょうか、大きく丸いアーチ状になっています。壁の塗装は、所々に剥げ落ちています。自然の岩石を模倣したデザインかと思いきや、温泉の成分に侵食されて剥がれ落ちているようで、少し触ると、ポコポコと崩れ落ちます。よく見ると、ガラス戸の金属の部分などは、結構な腐食具合で、形状を保っているのが奇跡的なくらいです。
体を流して、温泉に入ります。三内温泉のお湯の温度は、本当に、丁度よいです。肌に馴染むような泉質。舐めるとしょっぱいです。ミルク色のお湯。手ですくって飲みたくなります。むしろ飲もう!と思い、滝のように落ちてくる源泉のほうから両手ですくって、少しだけ口に含みました。何だか、魚介類のスープみたい。ここは飲用もオッケーな温泉なのかしら。
広い湯船(というか、この広い湯溜まり)の底面は、濁っててよく見えませんが、ザラザラとした岩肌で、小さな石や砂がゴロゴロとしています。奥へ進むと、急にヌルッとして、驚きます。何やら、苔の感触です。湯船のそこに、苔が生えてる。よく見ると、湯船の壁面にも、数ミリの苔がふわっと生息しています。なんという秘湯感。もう最高。
お湯滝の方に近付いて、壁をよく見ると、今まで遠目には、縄文時代の動物の壁画のように見えていた模様も、実は壁の表面材の剥がれ落ちた跡だったことが分かります。建築基準法的にどうとか、浴場施設崩壊防止法的に(そんなのあったかしら)なんて常識は、ここ、三内温泉に当てはめることはできません。嫌な人にはいやだけど、好きな人にはたまりません。(わたしはもちろん後者です。)
注意書きによると、地下750メートルから吹き出す温泉は、一切の加水などをせずに、そのまま使われているようです。まさに、霊泉です。縄文時代の「三内遺跡」でも有名な、三内温泉。この遺跡は、青森店4箇所しかない、ドラクエウォークの「お土産スポット」の一つでもあります。(ドラクエウォークのファンです。)
何度も出たり入ったりしながら、ぽかぽかに温まりました。本当に、最高に、良いお湯でした。帰りのバスの時刻表を見たところ、奇跡的に、バスがやって来る時間でした。最寄りの山内温泉前のバス停で、待つこと数分。雪の向こうからやって来る路線バスに乗り込みます。次の目的地は、青森市内の出町温泉へ向かいます。次回はクルマで来たいと思います。絶対に、また、来たいと思います。