羽田空港から北京首都空港までは、大体4時間くらい。映画なら2本観れる。お酒でも2本かしら、と勝手に思いながら、2つ目は軽いほうがよいので、普段はさほど飲まない白ワインを頼んでみた。
飲んでみると、軽い感じがする。鼻に抜けるようなツーンとした芳香。白ワインは日頃、あまり飲み慣れていないから、まあまあ美味しいと思う。甘さはほとんど感じない。ワインを注文するとき、キャビンアテンダントから「赤ワインですね」と言われた。 中国の方は、白ワインはあまり飲まないのかな。
往路となる機内では、「万引き家族」という日本映画を鑑賞した。日本アカデミー賞最優秀作品賞他、海外も含めて多くの受賞をした、2018年最大の話題作だ。見ごたえのある内容だった。貧困問題という悲しい現実。それは普通に周囲にありつつも、見えていないのか、あえて見ようとしていないだけなのかも知れない。日本の社会が抱える貧困問題を、家庭内暴力、老人年金詐欺などに乗せて、社会へ提起する役割を果たす作品。根底には、やはり家庭内暴力があり、そのさらに背景には貧困だとか、余裕の無い生活が横たわっている。
この映画を観ていると、この日本という国は少しづつ、沈んでいるように見える。広がる賃金格差だけでなく、多くの点で日本の位置は低下しているように思える。科学技術論文数、新生児出生数、幸福度など、あらゆるランク付けが下がっている。自分だけが負け組に落ちなければ良い、という利己主義では、この国全体の、特にこの貧困という問題に対しては、何の解決にもならない。同じ国に暮らす、圧倒的多数の貧困層に対して、何ができるだろう。
日本から離れて、中国へ向かう機内の中で観るには、何というか、心に響きやすいテーマの映画だった。