シリーズ第15弾。前座のような位置づけの特別短編「おたま」では、暖かい春の日差しを浴びながら、縁側で丸くなっている、白猫の「おたま」が登場する。秋山小兵衛は猫好きだった。「猫は人よりも気がまわる生き物じゃ。すべてを知っていながら、知らぬふりをしている。」我が家の猫も、実はそうなのかも…。哲学的な問いかけだ。
表題の長編「二十番斬り」では、斜陽にある徳川幕府を背景に、秋山小兵衛の剣技が冴え渡っている。当初は健康状態が不安視されるも、まるで神通力のような感覚の鋭さを十分に発揮して、不可解な事件に望んでいく。前作からの新キャラ(?)、町医者の横山正元も活躍。ウナギ売りの又六、懐かしの(?)杉原秀も活躍し、オールスター的な感じで、物語は軽快に進んでいく。
長編の良いところは、
傘屋の徳治郎が立ち寄ったのは、本所小梅村の茶店。小腹が減った傘徳、店主いわく「饅頭ならありますが、あまり旨くありませんよ」、傘徳「なんでもいい、そのまずい饅頭をくれ」そのまま6個も食べた。「なるほど、まずい。こんなまずい饅頭は初めてだ。」店主「うちの饅頭を6個も食べたお客は初めて。まことにご奇特なお客様でございます。」傘徳「なんとでもいいな。」この「小梅村」、今では東京スカイツリーがそびえ立っている。現存する「小梅小学校」に名前を残している。