燃えよ剣(上) 司馬遼太郎

昭和37年(1962年)に連載された本作、歴史小説「燃えよ剣」が、令和2年(2020年)5月22日に映画化されるという。「土方歳三」:岡田准一、「沖田総司」:山田涼介(ジャニーズジュニア)といった配役は、小説のイメージにも良く合いそうだ。「土方歳三の知られざる真実を描く、歴史スペクタクル超大作!」とのことだ。

さて、小説のほう。本作では、新選組の副長、土方歳三の生涯を、司馬遼太郎が描く。幕末の動乱期を、新選組副長として、剣に生き、剣に死んだ男。彼は、その天才的な「組織作り」の才能によって、新撰組を幕末最強の武装集団へと作り上げる。「燃えよ剣・上巻」では、武州石田村の百姓の子“バラガキのトシ”としての自由な若者時代、近藤勇や沖田総司などの天然無心流の道場時代、京都へと上っていき新撰組を結成、池田屋事件、他道場との合併などを経て、新撰組が一大組織となるまで、を描いている。

作品の中では、道場の格の違いが、様々なところで見かける。土方歳三、近藤勇、沖田総司らが修行した、多摩の小さな「試衛館」と、桂小五郎(木戸孝允)の一流道場「練兵館」。土方と桂との会話シーンがあるが、今風に言うと「総合病院の副院長と、町医者の代診」くらいの差があったそうだ。別のシーンでは、学閥にもなぞらえている。「中央の名の知れた国立大学と、地方の私立大学」など。北辰一刀流、天然無心流など、道場の型の違いは、個人の思想にも大きく影響したようだ。

昭和37年当時の日本の様子も、文章として紹介されている。今の国鉄(JRのこと)の何々駅のあたりである・・・など。調布市である「布田五宿」の記述。「今もさして様子は変わらないが、年中、まぐさくさい街道風が舞い立っている宿場町である。」ちょっと偏見あるようにも聞こえるけど。司馬遼太郎のいた頃の調布市には、どのような風景が広がっていたのだろう・・・?

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