世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語(エドワード・ブルック=ヒッチング)

日経新聞の土曜版の中折りで、古地図の特集記事があった。最近の地図アプリは、古地図を、現在の地図に重ねて閲覧できるようだ。江戸時代の地図を見ながら散歩が楽しめる。早速、自宅周辺の江戸時代の地図に重ねてみた。水田に囲まれた村があるばかり。何となく長閑な雰囲気は、あまり変わっていないようだ。

さて、図鑑のような大きさと、それなりの重さの本を開いてみる。神話の世界のような土地名、いずれにも地図や写真による数ページ分の説明がある。

アトランティス大陸の地図がある。古代ギリシアの哲学者プラトンが記した伝説の島。17世紀を中心に描かれた、複数のアトランティスの地図も掲載されている。アフリカとアメリカの真ん中に、広大な島として描かれている。哲学者プラトンが「リビアとアジアを合わせたよりも大きい」と言及していたことを下地にしているようだ。

ヨーロッパからアジアへつながる夢の北西航路「アニアン海峡」、16世紀には夢物語だったが、19世紀にはノルウェーの探検家ロアール・アムンセン本物の北西航路への航海に成功したそうだ。最近では地球温暖化の影響により、北極航路も期待されている。

コロンブスも信じたという、スペイン沖合いの大西洋に浮かぶ長方形の「アンティリア」は、キリスト教司祭の島。七つの都市の島とも呼ばれ、見事な都市を作り上げていたという。1489年の羅針盤海図に描かれている。

南米にあるという黄金都市「エルドラド」。地上の楽園「エデン」や、悪霊と怪物たちのすみか「悪魔の島」。ナショナルジオグラフィック社らしい、カラフルなページは、絵を目で追うだけでも、探検家になったような気持ちにもさせてくれる。

著者はロンドンの古書店の息子として生まれた、古地図の愛好家という。「もっともらしく壁に掛けられた、ありふれた印刷地図の中に、いったい、どれほどの幻が潜んでいるのだろうか。」一家庭に一つ・・・とは言わないまでも、学校の図書館、歯医者さんや床屋さんの待合室に置いてもらうと良さそうだ。現実から少し離れて、あえて惑わされたくなったときに、また読んでみたい。

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