烏金(からすがね)西條奈加 ライトに楽しめる、江戸の金貸しの話 

有り体に表現すれば、江戸時代の金貸しの話だ。烏金(からすがね)といえば、朝に借りて夕方にカラスがカーと鳴く頃には返すという借金。金利は高いが、身代も取られない。その日の生活さえ困る人々は、例えば朝に仕入れて昼に売り、夜には返済するという。烏金は、そんな使われ方もされたようだ。

主人公の、頭は良いが荒削りなピカレスク風の若者「浅吉」は、最後まで謎だらけだ。今風に言えばベンチャーキャピタル、またはハローワークだろうか?お得意さんたちの困りごとに、知恵と借金を惜しみなく提供し、問題を解決するトラブルシューターだ。石田衣良のIWGP「マコト」のような若者。

借金というと、マイナスのイメージが強いけれど、借金できるということは、信用力があることだ、と言い換えることもできる。浅吉の言葉、「借金てもんが、負い目から、暮らしの張りなるよう仕向けるのが抑えどころだ。」は、住宅ローンを背負うサラリーマンたち(私も含む)への、応援メッセージのようにも響く。

作者は日本ファンタジーノベル大賞を受賞しているそうで、快活な登場人物たちによりテンポよく進むストーリーは飽きさせない。一方で、池波正太郎などの時代小説と比べて、「人間臭さ」が薄く、読後に人物たちが、あまり記憶に残らない気がする。ライトアプローチのエンターテイメント時代小説。

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