烏金(からすがね)西條奈加 江戸の金貸し★トラブルシューター

人情溢れる江戸時代の下町を背景に、ちょっとカッコいい「借金取り」が、トラブルを解決していくお話です。

烏金(からすがね)とは、朝に借りて夕方にカラスがカーと鳴く頃には返す約束で借りるお金。例えば、てんびん棒を担いだ、八百屋さん。朝方に農家から野菜を仕入れて、街中を売り歩いて、夜にはその日の稼ぎから返済します。金利は高いのですが、身代(借金のカタ)も取らない。口や性格は悪いけれど、貧乏人にとってはありがたい「お婆さん」がヒロイン(?)のコミカルな時代小説です。

主人公(ヒーロー)の方は、頭が切れて、荒っぽく、人情味のある若者です。お婆さんの相方となって、借金取りの生活を始めます。彼は何者なのでしょうか。しばらく謎のまま、物語はテンポよく進みます。貧しい長屋の人々、お金の工面に困ったお武家さん。そんな「お得意さま」たちの困りごとに、知恵と行動力で挑みます。石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク(IWGP)」の主人公「マコト」を連想させる、江戸時代のトラブルシューターです。

借金は、信用の裏返しです。返済のために必死に考え、働くことで、生きがいにまで昇華できる人もいます。住宅ローン返済という目標あるからこそ、お父さんたちは満員電車を我慢します(私も)。「借金てもんが、負い目から、暮らしの張りなるよう仕向けるのが抑えどころだ。」

仕事、家族、住宅ローン。背中の荷物が重いからこそ、私たちは「踏ん張れる」のかもしれません。借金に「生かされている」のかも・・・。
作者は「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞した、西條奈加さん。快活な登場人物たちが、テンポよくストーリーを進めます。続編が待ち遠しくなる小説です。

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