粋と野暮 おけら的人生(畠山健二)

2020年12月現在、15巻まで発売されている江戸時代の落語的小説「本所おけら長屋」の作者による、自伝的なコラム集です。

「品行は悪いが、品性は良い」という人物を書きたい。そんな思いがきっかけとなって、ベストセラーは生まれたようです。落語やお笑いに対する、作者の相当な知識、熱量が伝わってきます。特に、「この二人以外にはいない」という、古今亭志ん朝、志ん生に対するリスペクトが感じられます。

昔の同級生や、業界の人たちに対して、やや辛口すぎな言い方もしていますが・・・。それが面白い作品を生み出し続ける、作者の独特な「品行・品性」感覚なのかもしれません。シウマイ弁当への愛情や、昔、公園でよく見かけた「カタ屋」の話など、昭和時代の懐かしいコラムもあります。

小説の背景にある重要な価値観、粋(いき)と野暮(やぼ)の違いに関しては、それぞれキーワードを並べて説明しています。小説を読む下地としても、参考になる一冊です。

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