未来の年表2 河合雅司

「人口減少日本であなたに起きること」という副題が掲げられている。この本は、その副題のとおり、人口の減少によってどのようなことが実際に、かつ、具体的に、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、どのように変わっていくのか、ということを、一つ一つの生活風景を例示しながら紹介してくれる。

東京で遅刻する会社員が続出する。なぜなら、通勤電車の本数が激減するからである。毎朝、どうしてこんなに人が多いのだろう、と思いながらも、少なくとも私自身もその「人」の一人であることを認識していることに気がつく。朝の時間帯、4分ごとに出発する通勤電車は、高い人口密度に支えられている。人が少なくなれば、本数も減る。

そのほかに、「刑務所が介護施設と化す」「亡くなる人が増えるとスズメバチに襲われる(身管理の空き家が増える)」といった、現時点ではあまり現実的とは思えないことではあるが、人口減少によって発生する事態を、私たちにも分かりやすい事例として解説してくれている。半分は冗談のようだが、良い点を指摘している内容もある。

一方で、筆者は、後半で「私たちにできること」という複数の提案を挙げているということも興味深い。どうせ人口が少なくなるのであれば、「戦略的に」対応すれば良い、という点は現実的で、納得できるような奇才ぶりをしている。

「結びに」として、現時点の高齢者、つまり、今の日本を戦後から作り上げてきた大人たちへのメッセージで締めくくっている。「逃げ切りの世代」と呼ばれている人たちへの言葉が続く。政策の結果ではあるが、自分だけよければよい、という戦後の誤った狭義の個人主義による行き過ぎについて、筆者なりに警告を鳴らしている。

「あなたに起こること」という視点で、単に大上段に「こうあるべき」というように言いっ放しでも無いところは、読みやすい。人口動態は、とても正確に、近未来の国家の成長予想図を描くものである。世代を超えた話し合いのきっかけとなれば、と思う。

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