さて、藤沢周平さんの牢獄青年医師シリーズ、第2巻である。これが面白くて、つい続けて、手に取ってしまう。最近の図書館は便利だ。インターネットで予約すれば、近場の図書館へ届けてもくれるし、どこの図書館に在庫があるのか、すぐに判別できる。江東区でいえば、古石場図書館には時代劇小説が多く置いてある。門前仲町駅の徒歩圏内にあり、深川江戸資料館に近く、下町情緒のある、お寺や神社の多い地域だ。カフェも多くて、楽しいところだ。
立花登という青年医師は、普段は牢獄の専門医として普通の仕事をしてるのだけれど、柔術の腕前は素晴らしく、囚人からも一目どころか多目に渡って置かれまくっているので、いろいろな相談事が持ち込まれて、楽しいこと物語が紡がれ始める。「先生よう、ちっとおねげえがあるんだ。」という一言。そのまま立去れば良いものを、耳を傾けてしまう立花登なのだから、そこから案件が始まってしまう。良い流れである。
そんな立花登も、休日にはね転がって、好色本などを読んだりもしている。これではいかんな、とか言いながら。おちえちゃんが通りかかると、さっと医学本などをよみ始める。このあたりに、なんとも言えない、共感を覚えるところがあり、愛着を感じる。
長屋の快活な女房たちの描写も、面白いと言っては女性に失礼だが、じつに生き生きと描かれている。「猪八戒か沙悟浄かといったご面相の女房たち」は行き過ぎな気もするが、それは2話目の「押し込み」で、病弱な薄幸の美人を対照的に際立たせるための表現であるともいえる。
立花登と、従妹のおちえさんとの距離感が、微妙に面白くなってくる。のほほんとした叔父、口うるさい叔母も含めて、立花登の実績を了解したためか、なんとなく雰囲気が変わってくる。今後の立花一家?の展開も楽しみだ。