ドトールコーヒー 市ヶ谷店(まもなく閉店)

都営新宿線の市ヶ谷駅、東郷公園の出口を出たところに、「ドトールコーヒー市ヶ谷店」はある。残念ながら、2018年11月15日で閉店する、という張り紙があった。

とても小さな店舗だ。必要十分なスペースはあるが、バックヤードが無いので、スペアのブレッドや掃除道具、制服の替えなどが、店内の人目につかない場所に立てかけられている。それでも禁煙、喫煙のスペースが分かれている。基本的に二人以上の客用のテーブルやイスは無い。この狭いスペースに、工夫して店舗のすべての機能を凝縮して設置したという感じがある。(あまり買う人のいない)コーヒー豆やコーヒー器具販売品の設置スペースを大胆に省けば、二人用テーブルを二つくらい置けるのではないかと思った。

「朝カフェ・セットB あつあつハムチーズ」を頼んだ。カフェオレも付いて390円は安い。店内は女性の店長らしき方と、年配の男性。男性のほうは調理専門で、朝のラッシュ注文を集中して作ってくれている。たまにオーダー間違い(テイクアウトと店内用の誤り)が見られた。注文が重なると一人では厳しそうだ。おそらく都営新宿線の到着と同じくラッシュでお客さんが入ってくるので、注文が集中するのは致し方ない。オフピーク時に着席したので、しばらくカフェオレを飲みながら、店内の様子を見ていた。

この店の名前が「市ヶ谷店」であることは、おそらく市ヶ谷駅周辺で、一番はじめに設置された店舗なのだと思う。ドトールはこのほか、「市ヶ谷駅前店」「市ヶ谷プラザ店」があり、この店がJR駅から一番、遠い。それでも小さい店舗で十分に回転率を上げてきたのだろうが、二つ隣に「タリーズコーヒー」ができて、最近は「カフェドクリエ」がはす向かいにできた。二店とも、ドトールより単価は高い。しかし、最近は、「どうせコーヒーを楽しむなら、200円くらい高くても、ゆったりとした空間で、落ち着きながら、おいしいコーヒーを飲みたい」と考えるお客さんが多いのだろう。

コーヒーの美味しさの違いはよく分からず、チェーン店はどれも同じなのでは、と思うが(失礼)、たしかにここ「ドトール市ヶ谷店」は、一人客専門のイスやテーブルで、あまり「ゆったりとした」感覚を味わえるところではない。時代の流れは、「少しお金をかけても、よい時間を」に傾いている。カウンターにある「店長お勧め、どら焼き」は、この店がどのようなコンセプトなのか、とても分かりづらくしていると思う。

ドトールは好きだ。最低限の一人用スペース、手ごろな価格、おいしいサンドイッチメニュー、気兼ねしないところ。しかし、周囲の競合店の乱立など、より「ドトールらしさ」を際立てないと、生き残りは難しい時代になったといえる。私が店長なら、ドトールの「モーニングセットの気軽さ、安さ」を前面に出して、たとえば店頭でモーニングセットの持ち帰り専用のカウンターを置くだろう。実際に、私が座っていた20分くらいの間でも、モーニングセットとコーヒーのテイクアウトを注文する客が多いようだ。同等のタリーズモーニングは530円、ドトールは390円だ。十分に勝てると思う。

一方で、忙しいのは朝のピーク時だけなのかもしれない。昼間や午後ともなれば、よりリラックスして、コーヒーを楽しみたいと思う人が増えるだろう。結果としてタリーズやカフェドクリエ、または少しあるいてスターバックスへ行くかも知れない。閉店は惜しまれるが、より特色があり魅力的な店を作ってもらえるよう、今後のチャレンジに期待したい。

 

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