「この世で一番のメッセージ」 オグ・マンディーノ

オグ・マンディーノ(作中の親しみのある呼称に従えば、「ミスター・オグ」)の作品を手にするのは、これで4冊目になる。1923年生まれで、「世界で最も多くの読者を持つ人生哲学書作家」とある。生涯で19冊の本を執筆した、という。初めての作品は「世界最強の商人」というビジネス書なのだそうだけれども、それはまだ読んでいない。しかし、代表作といえば、彼の最良の友人がはじめて登場する「この世で一番の奇跡」だろう。それに続く「この世で一番の奇跡」、そして本書「この世で一番のメッセージ」で最終を迎える、一連の「この世で」シリーズ三部作だ。

ビジネスで成功しつつ多忙な生活に追われる作者のもとへ現れた、背の高い優しい老紳士、サイモン・ポッター。貧しさの中でも多くの本を読み、深い見識を持つ彼は、自分の職業を人生に困っている人たちに助けの言葉をかける「ラグピッカー」という。サイモンとオグの会話でつながれる物語は、人生の成功とか、幸せとか、ときには神さまといった奇跡的な事象にまで広がったり、身近な生活への新鮮な観点の発見へと及んだりする。

マンディーノさんの書籍は、本書「この世で一番のメッセージ」は竹書房、「この世で一番の奇跡」「この世で一番の贈り物」はPHP出版、「十二番目の天使」は求龍堂(文藝春秋の系列のようだ)、といったように、出版社も異なるし、翻訳者もそれぞれだ。それでいて、装丁パッケージは似たような、シンプルなデザインをしている。翻訳も丁寧だ。他にもダイヤモンド社や角川書店からも出版されている。複数の出版社が認めていた、ということだと思う。それぞれ2000年ごろに続けて出版されていて、今ではブックオフで100円で購入できるが、いずれも時代の色を感じさせない、良書揃いだ。

本書は、サイモン・ポッター老人が残していったという文書を中心に、「より良い人生を送るため」の、「10段のはしご」と作中で読んでいる、短いストーリーを読み進めることになる。その一つ一つは、それより過去における人生哲学書であったり、偉人の言葉であったり。それらをサイモン・ポッター老人の解説付きで、分かりやすく伝えている。語られる人物たちは19世紀(1800年代)を生きている。そこでの教訓が現代社会にも十分に通じるということは、ちょっとした驚きだった。

「自分がいま置かれている場所にチャンスがある」「自分が目を向ける方向に、あなたは進んでいく」

本書「この世で一番のメッセージ」の原書である英語題名は、”The Greatest Mystery in the World”。「ミステリー」を「メッセージ」と言い換えている。”Mystery”という英単語には、推理小説でいう秘密的なミステリーの他に、秘訣、神秘、秘法、または宗教上の奥義、といった意味があるようだ。

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