「ちょっと今から仕事やめてくる」 北川恵海

「人生って、それほど悪いもんじゃない」と思える、爽やかな読後感のある作品だ。いわゆるブラック企業に勤めていて、心身共に衰弱し、自殺を考える若者が、素晴らしい(偶然の?)出会いや、気づき、前向きな習慣を通して、自分で人生を切り開いていく様子を描いている。主人公はどこにでもいそうな若者であり、誰にでも経験しうるようなシチュエーションである。それだけに、私たちの多くにとって、目の覚めるような示唆を与えてくれる。

人生に本当に必要な物なんて、そう多くない気がする。なぜ人生を大切にするのだろうか。半分は、自分のため。そしてもう半分は、自分を大切に思ってくれている人たちの気持ちだ。そういう優先順位で考えた場合、「会社変えたら?」とは、「携帯変えたら?」と同じくらいの軽いノリで考えるべきことなのかもしれない。少なくとも、この作品の主人公のように、精神的に追い詰められている場合(そういった状況は、私も含む、多くの人が経験する可能性のあることだ)、とても大切な気づきになる。

「休みの日こそ、気合いを入れてお洒落をすべきだ。」「誰かに説明するときは、自分が感じる1.5倍は、ゆっくり話すこと。」といった、コミュニケーションを大事にする上でのヒントにも富んでいる。作者にとっては本格的なデビュー作品になる。本作品は2017年に映画化し、多くの人たちに知られるようになった。作者は今後も、人生に影響を与えたような良い作品を書いていくと思う。応援したい

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