中国の行動原理 国内潮流が決める国際関係(益尾 知佐子)

難しそうな本書を手に取ったきっかけは、会社の同僚からの推薦だった。彼は中国の大学で公共政策を学び、今でも色々なメディアに積極的に寄稿している。そんな彼から「これはすごく面白いですよ」と言われて、さっそく図書館で予約したが(セコイ)、本屋で立ち読みしているうちに面白くなり、買ってしまった。

「世界各国と軋轢を起こす中国。その特異な言動は、中華思想、米国に代わる世界覇権への野心などでは、説明できない…。」近年の歴史、共産党の仕組み、中国の家族観などから、多角的な説明を試みている。

「対外的に強い態度を示して国内の不満をそらす」ことは、中国だけでなく、歴史を見れば多くの国で行われてきた「外交政策」だ(朝鮮半島では今でも…)。第1章:現代中国の世界観では、なぜ中国が周辺の小国(日本も!)に対して、制裁的な外交手段を取ろうとしてきたのか説明。主要敵としての位置づけ、国内に対する脅威論へと誘導する背景には、かつて栄華を誇った中華帝国の「喪失感」がある、という。

中国が陸路と海路により経済圏を拡大する「一帯一路」政策。明の時代の鄭和という政治家が、大航海の末に周辺諸国との平和的な友好関係を築いた美談が良く引き合いに出されるけど、「スリランカの国王を拉致した」ことが友好的だろうか、という投げかけも興味深い。

第6章:海洋問題は、なぜ噴出したか。反日の情勢をうまく利用した「国家海洋局」が、独自の権益拡大のために積極的に動くも、海のシルクロード(一帯一路)に本腰を入れたい習近平リーダー肝いりの「中国海警局」に主導権を握られ、解体されていく様子は、ドロドロな政治劇を見ているようだ。その海警局も、習主席の下にある中央軍事委員会が実権を握る。

7月6日の朝刊に、「中国、東シナ海でも軍事練習、3海域同時、影響力を誇示」という記事があった。東シナ海は、「海のシルクロード」の起点だ。中国国営メディアは「三大戦区で大演習だ」と誇示しているそうだ。コロナがピークを迎えた3月以降、海洋進出を強化している。国のリーダーの強すぎるリーダーシップが伺える。

最終章では「ポスト習近平」という、中国では活字にしたら国家転覆罪で捕まってしまいそうなテーマを取り上げる。強力な家父長の体制下では、息子たちに不満が募る。毛沢東の死後、鄧小平は「市場経済」という秘薬を得て、中国(というより、中国共産党それ自体)を復興させた。現リーダーの任期は2022年まで。果たして奇術や秘策の類は。彼の手の平の動作に、世界の注目が集まっている。

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