柏耕一さんは、最近刊行された、彼の別の本が読みたかったのだけれど、図書間で予約待ちのため、この本を予約したら、すぐに順板が回ってきた、というあらすじである。紹介文によれば、出版社勤務後、編集プロダクションを設立。出版編集・ライター業に従事していたが、ワケあって数年前から某警備会社に勤務。73歳を迎える現在も交通誘導員として日々現場に立っているそうだ。
しかしながら、この本を読むことで、柏耕一さんが、並々ならぬ分量の読書を通して、様々な分野の書物、作者、言葉に精通していることが伺える。この本の副題は、「文豪たちが教えてくれる、最強の表現力・生きる作法」とある。こういった種類の本は結構、世間に出回っているけれど、それぞれの書籍の作者の紹介もあり、簡単な感想文にもなっている。
気に入った表現を、いくつか。最後のページにある、「祭りと修行(小林ハル)」にある、「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」だと感じた。
小林ハルは、幼児期に失明したが、なんでも自分でできるように母親が厳しく育て、瞽女(盲目の三味線引き)として生き、105歳まで生きて、黄綬褒章を受賞した。
「一怒一老一笑一少」、「あぶのうございます。」なども、面白い。太宰治、芥川龍之介、森鴎外などの文章も紹介している。柏耕一さんは、ほんとうに多くの本を読んでいて、良い言葉を拾いなされている。
この本は、次の本に繋がるキッカケになる。気に入った言葉を見つけたら、その作者の本を探してみようと。早速、いくつかの本を心のメモ帳に書き留めた。図書館の予約の順番が降りてくるのが、楽しみだ。