ホテルの夕飯に、振る舞われたお酒。酔鯨、すいげい。高知県の飲み屋さんやレストラン、ホテルなどで、飲み放題メニューを頼むと、このお酒が出てくることが多いようだ。土佐の地酒は、種類が多い。どれも気軽に楽しめるのが良い(酔い)。
酔鯨酒造株式会社は、高知県を代表する酒造メーカーであって、酔鯨という名前の由来は、土佐藩第15代藩主山内容堂が自ら名乗った「鯨海酔侯」から来ているそうだ。幕末四賢侯の一人であって、「鯨のごとくお酒を飲み、酔っており候」というようなニュアンスのようだ。
華やかな味わいだ。さほど雑味がない。鰹のタタキに、素晴らしく、ぴったりだ。アルコール度数は15度。注文しなくても、冷やの状態で、どんどん持ってきてくれる。余ってしまえば、もう一度、冷蔵庫でも保管できるし、この180mlの瓶の状態というのは、レストラン側にとっても、都合がいいのかもしれない。
さて、山内容堂さんは、酒と女と詩を愛し、自らを「鯨海酔侯(げいかいすいこう)」と称したという。幕末の時期に大胆な手法で改革を推進した、と評価される一方で、当時の志士たちからは、幕末の時流に上手く乗ろうとした態度を「酔えば勤皇、覚めれば佐幕」と皮肉に言われたそうだ。明治維新後は、官職を得て(さすがに薩長土肥は「勝ち組」だ)、東京の台東区あたりに住み、妾を十数人も囲い、酒と女と作詩に明け暮れる豪奢な晩年を送り、46歳で世を去った。なんとも豪快な人生に見えるけど、それが幸せだったかどうかは、本人のみぞ知るのだろう。