会社の外部セミナーで、講師の方が資料の中で引用されていた書籍。昭和60年だから、1985年の発刊だ。AMAZONでも入手できず、近隣の区の図書館を探して、やっとみつけた本。高度成長期の真っ只中にある日本企業を背景とした、人材育成のバイブルである(と、思う。)
著者である山田雄一さんは、公務員、会社員、大学教授となり、元明治大学学長にもなられ、2012年に亡くなられている。今で言う、企業カウンセラーだろうか。「日本の組織の本質を構成している稟議と根回しの風土を掘りおこし、日本の多くの若い働き手がその風土の中でどう伸びていったらよいかを明らかにしていきたい」という、熱い気持ちが述べられている。
「学生たちの関心の第一は就職であり、それは西欧のように就職務ではなく、就職場である。」良い大学から、良い会社へ。少し前までは常識だったけど、未来が読めない時代(大企業でも倒産する)、こうした常識は変わりつつあるのかもしれない。
「例えばアメリカの昇進とは多くの場合で転職を伴う地位の上昇を意味するのに対して、わが国には定期人事異動や年功序列昇進という人事慣行が形成されていて、最近になって(1984年当時)、日本のような行き方への転換を唱導する書物が相次いで書かれるようになった。」
「私たちにとって会社とは、全人格を投入している職場という名の生活共同体である。」と言い切る。「多くの西欧人のように、職場生活、個人生活、家庭生活を峻別し、それぞれについて個別的なルールを設定するやり方は、日本の会社になじまないのである。」とまで言ってしまう。
清々しいほどに、前時代的のようだけど、この30年で時代も随分と変わったものだ、とも思える。いや、これから30年後には、別の時代が来ているのかもしれない。色々と気が付かせてくれる、歴史的なビジネス書だ。
【絶版】稟議と根回し (講談社現代新書)