きみと、波にのれたら(豊田美加)

2019年の夏。この夏に映画館で放映予定の、話題のアニメーション映画で、その原作となる小説だ。中学一年になった息子が買ったものを、わざわざ貸してくれたものだ。確か、先日に「怪獣の子供」という映画を一緒に見に行ったときに、予告編として流れていたのが、この「きみと、波にのれたら」という映画の、前予告となるトレーラーだった。

分量がそれほどないので、一時間もあれば良見通せる内容だけど、物語の発走が面白い。肝心のストーリーの展開だが、前半はほとんど読み飛ばしてもいいくらいの(大変失礼だけど)甘ったるい恋愛展開であるが、中盤から、だんだんと面白くなってくる。クライマックスのところも、良い感じに引き込まれる。

なかなか魅力的な登場人物たち。私の狭い生活空間の中では、現実的にはあまり出会う機会のないような方々であり、物語の展開も途中で何となく予測できてしまう流れではあるけれど、それらを織り込みつつも、波に乗るかのように軽快に読み進めることができる。最近の小説の傾向として、パートナーが死んでしまうことにテーマ性を持たせることが、流行しているのだろうか。一方で、悲壮感がさほどには漂っていない様に思えるのは、主人公の性格の明るさの影響なのだろう。

第三者からの視点による小説の文体だけれど、「ふわっふわのオムレツ」のような表現など、とっても!ライトノベル的だ。波乗りシーンを始めとした、水の流動的な表現や、重要な要素である「歌」のメロディー感などは、もしかしたら小説よりも、映像化できるアニメーションのほうが、得意分野なのかもしれない。映画館で観るのも、楽しみだ。

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