燃えよ剣(下) 司馬遼太郎

新選組「鬼の副長」、土方歳三の物語、その下巻。「新選組を天下第一の喧嘩屋に育て上げる職人」として、武士というものに鮮烈な理想を抱きつつ、激動する幕末の大空を飛翔するような、爽快な歴史長編だ。

下巻では、戊辰戦争の幕開けでもある「鳥羽・伏見の戦い」から始まる。明治元年を迎え、日本は短期間に大きく変わっていく。世間の大勢は新体制へと傾き、新撰組らの佐幕派は少数になっていく。知識人たちは言う。「今はまさに国難の時。大政奉還された今、日本は統一国家を樹立し、国内を整頓して、外国と堂々ものを言えるような国にならねばならぬ!」

その一方で、土方歳三は、自分の武士としての考えを貫こうとする。「歴史というものは変転していく。その中で、万世に易(かわ)らざるものは、その時代その時代に節義を守った男の名だ。新撰組は、節義の集団としたい。旗本八万期が徳川に弓を引こうとも、最後の一人となろうとも、裏切らぬ。」

この純粋さ、頑固さが、ついつい時勢に流されてしまいがちな現代人(私をはじめ)にとって、とても眩しく映ってしまう。土方さんが「恋人」と呼ぶ、お雪さんも登場。しかし、情勢は新撰組にとって厳しい方向へ。局長の近藤勇を、風に乗れば大きく舞い上がる凧へ例えつつ、自分を「自力で飛んでいる鳥」に例える。「おれは翼のつづくかぎりどこまでも飛ぶぞ。」

「燃えよ剣」を読もう!と思った、そもそものきっかけは、函館への個人的な旅行。夜行バスで青森へ到着し、大雪の中を、青函連絡船(青函フェリー)で函館へ渡った。五稜郭タワーへ上って見下ろした景色は、雪と観光客(中国系の方が多い)でほとんど見えなかったけど、よくもまあ、こんなに遠いところまで、軍隊を組織してやってきて、しかも抗戦した、という事実に感心した。

五稜郭タワー1階のお土産売り場では、土方歳三グッズが売られていた。小説のイメージとは異なり、かなり可愛いものだけれど。最近の刀剣ブーム、幕末アニメブーム(女性ファンが多い)など、形は変わっても、人々から愛され続けている。

タイトルとURLをコピーしました