剣客商売 11「勝負」(池波正太郎)

「勝負」では、秋山大治郎の久能が描かれている。小兵衛は、「剣を持って人を助くる事ができるのであれば、木太刀の試合ひとつに負けたからと言って、何のことやあろう。な、そうではないか…」といって諭す。大治郎は気力の充実を欠いた状態で試合に望む。しかしそのあと、物語の終盤、気持ちの切り替えというか、再勝負に望んだ彼の男らしい決断は、一陣の爽やかな風を感じるかのようだ。

「初孫命名」では、ついに誕生!小兵衛の初孫、大治郎の子!名前を巡っての意見の不一致は、いつの時代もあるもの。とある別の人物の鶴の一声が、大岡裁きのようにスッキリと物語を締めくくる。ちょっとしたドタバタ感が、とても良い。

「小判二十料」では、小兵衛としては珍しく、いつもは蚊帳の外に置かれがちな、おはるに対しても、事案の詳細を相談する。小野田万蔵について語るも、「おはる。親と子というのは、生み落とし、生まれ出るということだけで成り立つものではないのじゃ。生んだ後、生まれた後の暮らしあってこそ、親であり子であるのじゃ。」そして、「この世には、いくらもあることよ」という。料亭の外で降り始める、初時雨(秋の末から冬の初めごろに、降ったりやんだりする小雨)。人生、色々とあるけれど、色々とあるから人生なのだよ、と言われているような気がした。

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