著者は24歳で住職になり、尼僧(女性の僧侶)である奥様、幼い子どもたちと一緒に、四国のお寺で暮らしている。四国八十八ヶ所霊場の57番目のお寺、栄福寺。仏教の経典の言葉を、日々の生活に置き換えて、優しく解説してくれる。
「しばらく、ほっといて下さい」料理番組などで聞く言葉。人生におけるチーズやヨーグルトになる大切な存在が、その前に空気に触れてしまったり、雑菌が入ってしまったり。「こねくり回し過ぎている、触りすぎている。」あえて、ほっとく、というものが、結構あるかもしれない。
短いエッセイを集めた本だけれど、前後のエッセイに繋がりがないので、あれ?さっきの話は、どうなったのかな?という気持ちが残る。「密教経典から感じる知恵」18コラムが散発的に紹介されるけど、その前後に関連コラムを置けば、もう少し理解しやすくなるのでは…と感じた。
お葬式で、お坊さんが、戒名をつけるとき。ヒントを探すために、遺族の方へ、亡くなった方はどんなことが好きでしたか?と尋ねる。「僕たちも、生きている間に、自分や誰かにもっとその質問をしてもいいのかもしれない。」何が好きですか。ステイホームやテレワークで時間のある今こそ、見つめ直しておきたい、とても大事なことのような気がする。