任侠病院(今野敏) 大切な基本を再認識

「任侠」シリーズの第三弾は、病院の再建がテーマ。永神のオジキが持ち込んだ、世田谷区上馬にある「駒繁(こましげ)病院」の立て直し話。「医は仁術って言葉、知ってるかい?他人様に頼りにされる仕事ってのは、簡単に閉めちゃいけないよ…」我らがオヤッサン、阿岐本組長の鶴の一声により、代貸・日村誠司のストレス生活が始まる。

前作では熱血教師ぶりを発揮した主人公の日村誠司。今回はあまり目立たないようだが、阿岐本組の個性的なメンバーたちの引き立て役に回っている。突然はじまた暴力団追放運動で、事務所から出られないメンバーたち。コロナウイルス状況下でのステイホームのようだ。

今作品の真の主役は、病院だ。事務長、院長、看護師、受付担当の方々。プロ意識を持って困難に立ち向かう姿が描かれている。急患対応医師の言葉「人を助けるのは、医者じゃない。病院なんだ。病院のみんなで人を助けるんだよ。」こうした言葉や態度を見る日村に、「通えば通うほど、あの病院を守りたくなってくる。」と言わせている。看護師長の真摯な言葉が心に刺さる。「負けちゃいられねえな。」気持ちが引き締まる思いになる。

外壁をきれいにして、蛍光灯を新しくする。看護師の不満に耳を傾け、受付に笑顔を戻す。医療の世界は、素人が口出しできるような代物では、ないのかもしれない。それでも、「どんな仕事だって、所詮人間がやるものなんですよ。それならば、やりようはいくらだってあります。」ヤクザ同士の揉め事を別にすれば(そこが本シリーズの面白いところだけど)、再建のためにやっていることと言えば、掃除や挨拶など、原理原則に立ち返るものばかり。基本が大事ということを再認識できる作品シリーズだ。

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