すごい弁当力!(佐藤剛史)「弁当作りが上手になる本では、ありません」

最近、嫁さんが、私の毎日のお弁当を作ってくれるようになった。長男が高校に入学し、毎日お弁当(かなり大きめだ)を持たせる必要が出てきたこと等の背景もあるけれど、とても助かっている。毎日のお弁当が楽しみになった。以前は自分で作るので、ほとんど同じメニューの繰り返しだった(野菜炒め、ゆで卵、冷凍春巻き)。

千代田区の四番町図書館では、その時々の旬なテーマの本を並べた、オススメコーナーを設置している。外食からランチへという流れの中で、お弁当をテーマにした本が並んでいた。新しい生活(ニューノーマル)を前向きに楽しむための、こうした図書館の提案は、素晴らしい試みだと思う。お金もかからないしね。

「これは弁当作りを応援する本だけど、弁当作りがうまくなる本じゃない。」弁当力とは、美味しく、手早く、きれいに造る力ではなく、人それぞれがお弁当に対して抱いている思い出を踏まえつつ、「弁当作り」を通じて成長し、自らの三食、毎日、人生をより豊かに、ハッピーにしていく力なのだ、という。

著者は九州大学の助教で、弁当から人生論まで、幅広い著作がある。九州大学の学生を対象にアンケート調査をしたところ、「手作り弁当」が90%以上という結果だったそうだ。食は、こどもの体を育むだけではなく、子供の心、学力をも育むという。本書では、全国各地のお弁当に対する興味深い取り組みや、子供たちからの感想文などが掲載されている。心の温まる文章だ。

一方で、コンビニ弁当やファーストフードに対しては、やや厳しめにコメントされている。冷凍食品も「農薬入り餃子事件」を取り上げたり、コンビニのおにぎりも「原価は25円」という、やや極端なコラムを掲載。著者による、手作り弁当に対する、愛着心の強さの裏返しなのだろう。

ちなみに、アマゾンで「お弁当」関連のランキングを見ると、上位から、「悩まない!ちゃちゃっと弁当」「世界一速い!ずぼら1分ごはん」「考えないお弁当」といったタイトルが並ぶ。本書の初版が出た2009年から、社会の様子も変わっている。色々な考え方があることは、いいことだと思う。お弁当と同じだ。違いがあるから、楽しさがある。

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