バーボン・ストリート (沢木耕太郎)

沢木耕太郎といえば、深夜特急、が有名だ。学生時代に、その小説に感化された友人と一緒に、中国大陸をボロボロの鉄道で旅をしたことがある。私は、桂林、深セン(当時は栄えていなかった)、香港へと入ったが、彼はそのあと、さらに中国大陸を奥地へと旅し、チベットのラサまで行っていた。もう20年以上も昔の話になると思う。

この本を読み進めて見ると、沢木耕太郎さんの自由な人生の歩き方には、とても共感するところがある。色々なところを旅しておくと、色々な文化、考え方、つまり価値観を知ることができて、それを自分の一部にすれば、物事に対する視点が増え、視野が広がり、人生が豊かになる。

さて、本作品だが、講談社エッセイ大賞を受賞しただけのことはある。沢木耕太郎さんが若かりし頃に、諸外国を旅した話や、井上陽水の作曲に手助けをしたこと(宮沢賢治の雨ニモマケズ、が印象的だ)など、テーマは実に取り留めもないのだけれど、つい、読み進めてしまう。魅力的な文章だ。

著者の代表作でもある、深夜特急を、読んでみたくなった。日常から離れて、少し視点を遠くへと移したいとき。沢木耕太郎さんの「バーボン・ストリート」は、現状からふと遠ざかった感覚を与えてくれる。少しだけ今の諸問題から距離を置いて、冷静に状況を見つめ直したいときなどに、特に効きそうなお酒の街通りだ。

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