鬼平犯科帳 7 「剣客商売」小兵衛登場?

個人的には「はさみ撃ち」が一番の傑作だと思う。引退した大盗賊、万屋小兵衛老人は、「剣客商売」から出てきたかのようだ。長谷川平蔵との、夢の共演といってよい。鬼平も「ああいうのが、真の大盗賊というものだ」と褒めている。何だか嬉しくなってくる。

相変わらず、情景の描写が素晴らしい。「女郎花(おみなえし)の咲きみだれる河岸の草むらの上を、赤蜻蛉(あかとんぼ)が群れをなして泳いでいた。澄みわたった秋空には、雲ひとつ浮かんでいない。」

長谷川平蔵の長男・辰藏の成長ぶりも見られる。「泥鱠の和助始末」は長編だ。その感慨が続く「寒月六間堀」で「人間というもの、生きていくにもっとも大事なことは」と述べている。最後の「盗賊婚礼」は、捕物ストーリーとしては異色だけれど、何とも清々しい読後感を残してくれる。

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