とても古い造りの銭湯だ。上野駅、御徒町駅の近くにある。この一帯では唯一の銭湯。昔はもっとあったのだと思うけど、残っているだけでも貴重だ。訪問した日は外装を修理中であったが、風格のある日本的な造りの建物だった。
さて、脱衣場に入ると、少し狭い感じがするが、それはやや込み合っているせいでもある。見上げる天井の木目に歴史を感じた。キャリーケースが入る大き目のロッカーが備えられている。秋葉原にはキャリーケースを引きながら歩いている旅行者が多い。彼らにとっては役に立つのだろう。
銭湯の構成は、いわゆる下町のスタンダードな配置であり、建物に歴史を感じる点では、それを評価する人もいると思う。何より、混雑している。繁盛もしているのかもしれない。大浴場、脱衣場、それぞれ10名を超えている。ただし客層は旅行者がやや多いようだ。いずれも静かで、黙々としている。下町の銭湯は大体、地元の常連さんの間の会話で賑わうのだけど、なんとなく「賑わい」というより「混雑」という言葉のほうがしっくりくる。
大浴場へ移動する。さほど広くはないが、昔からあるような風格がある。浴槽の壁に黒いごつごつとした火山岩が装飾されていて、3メートルくらいはあるだろうか、その上に滝の絵が描かれている。壁画は、中央に富士山、弁天様の絵が描かれている。ボディーソープやシャンプーが無料なのはありがたいが、「必ず体を洗ってから入るように」「浴槽の中で体や足をさすらないように」など、やや注意書きが目立つ。その割には、年配の常連さんと思わしき方が、浴槽内のお湯で頭を流していたのを見かけた。迷惑行為と思う以前に、そのお湯はあまり清潔ではないですよ、と思った。
朝の6時から夜の8時まで、という営業時間は、朝風呂が楽しめるきわめて数少ない銭湯としては、高い評価を得ると思う。場所柄もあり、上野界隈を散策したあとに立ち寄るのも、楽しいかもしれない。 都心部のランナーが汗を流すのにも良いところだと思う。