知らないと恥をかく世界の大問題10 (池上彰)

「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズも、10巻を迎える。副題は「転機を迎える世界と日本」とある。いつの時代でも転機はあるものだが、今回は「新冷戦時代」として、主に米中貿易戦争を背景とした、世界情勢の変化にポイントを合わせて解説されている。前回の9巻の続きではなく、もう一度、基本的なところから説明してくれるので、世界情勢に関する知識をアップデートするには、最適だ。

居座るトランプ「アメリカファースト主義」、イギリスによるEUからの離脱、核合意をめぐるイランとサウジの関係、習近平の一強時代を迎える中国など。米中の貿易戦争の背景にある、中国の急激な世界戦略の展開、次の世代の通信規格の覇権争い、といったテーマを、丁寧に説明してくれるのは、助かる。

新しい元号となり、令和の時代を迎えることも、重要な転機としている。平和だったという(少なくとも日本にとって?)平成が終わったが、世界は米中を基軸として、あわただしくなっている。ペンス副大統領の、「中国の経済の自由化が、政治にも反映することを願っていた。しかし、われわれの希望はかなわなかった。」それは、一方面から見れば、とても傲慢な姿勢のようにも見える。強いアメリカは、力をつけつつある中国を、明らかに警戒しはじめている。

プロローグ+6章+エピローグの8部分の中の半数以上で、何らかの形で登場するのが、中国だ。新冷戦、米中関係、習近平政権、AI派遣争奪戦、安部政権。今年の6月に阿部総理が習近平主席と大阪のG20で会談した際には、「中国は重要な、永遠の隣国」と言及したそうだ。好き嫌いに関わらず、この大きな隣国は、経済、政治、社会現象を始めとしてスポーツや芸能に至るまで、世界の関心ごとの大部分を占めるようになってきた。どちらかに寄りつつある書籍群でも、中間的な立場にいる著者の解説は貴重だ。

著者の解説の良いところの一つだが、現在の状況だけを解説するのではなく、こういう状況に至った近現代史を含めて説明してくれるのはとても助かる。三大宗教や、共産党・国民党の戦い、ソ連の関わり。EUとイギリスの関係性。歴史が分かると、今が分かる。そして、未来すらも、紐解くことができる。「なぜ、こうなっているのか」を理解でき、頭がスッキリ(したような気持ちも)して、健康にもよい、値段も優しい新書。これからも定期的に購入したい。

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