新聞の広告欄で見かけた、目を引くタイトルの本。著者の柏耕一さんは、波乱万丈な人生の末、73歳にして現役の交通誘導員。少し前の著書「武器としての言葉の力」を読んだ後だと、この作品とのギャップがすごいけど、経験に基づく予想通りの面白い内容だ。
「当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます」というサブタイトルで、すでにアピール抜群だ。ヨレヨレのイラストも、すごく良い。柏耕一が勤務している警備員会社は70歳以上の高齢者が8割を占めているそう。最高年齢の84歳の「エロ爺さん」の話も面白い。著者の背負っている高額な借金もサラリと話に出つつ、日記のような調子で綴られている。
内容といえば、単なる第三者的なルポではなく、職業人として感じる矜持もあるけど、交通誘導の仕事に対する愚痴、不平、不満が多い。だけれども、一方的ではなくて、柏耕一さん自身がギャンブル好きなこと、奥様には頭が上がらないところなど、バランス良く好感が持てる。交通整理員に対して平気で嘘をつく悪意あるドライバーたちを攻めつつも、自分をも顧みて、「人は嘘をつく動物なのかもしれない。とはいえこれもまた私の性懲りもない弁解かもしれない。」と書いている。
長岡大花火大会へ2泊3日で警備の仕事に行ったこと。簡易トイレを運ばされてのハプニング(想像どおり)。個性豊かな同量たち、どうしようもない親方、監督者。喜びと悲しみ、ときどき怒りが、テンポ良く展開される。
私自身も学生時代、幕張メッセの管内警備員のアルバイトをしていたことがある。法定研修のあと、宝石関係の展示現場に入った。固定ポジションでの、刺激の少ない立ちっぱなしの業務に飽きてしまい、数日で終えてしまったけど、交通誘導の現場に入っていたら、また別の未来があったのかもしれない?
交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます