中学1年生になった我が家の息子が、推奨図書として貸してくれた本シリーズの、3作目。紹介文を見ると、「発光病という、不治の病に侵された女子高校生が、残り少ない生命においてやり残したことを、偶然病院にやって来た同級生の男子高校生に「代行」してもらうことで、互いに心を通わせていく恋愛小説」とある。息子が貸してくれたシリーズ1作目「君の膵臓をたべたい」にも似ている。作者の佐野徹夜さんは2016年に第23回電撃小説大賞を受賞、 2019年3月に映画化もされたようだ。戦略的なメディアミックスによるスピード感。角川書店が総力を挙げてプロデュースする自信作だ。
ライトノベルの定義は何なのか?なんていうことはどうでもよろしいのだけれど、分野や文体やキャラクターや話のテンポ、そういったものがライトノベルという雰囲気を作っているのだろう。いずれにしても、軽い気持ちで読み進められて、また別の人生をリズミカルに追体験できる。これまでに3作を読ませてもらい、そのうちの2つは恋愛小説だったけど、ヒロインの描写や主人公の心情変化には共通するものを感じた。
一方で、読み手の過去の体験から投影された人物像なのかもしれない、とも思う。ヒロインやライバル、仲間といった登場人物は、もちろん同じ文章で読み手に語りかけてくるけれど、読み手はそれを自分が人生で体験した具体的なキャラクターに知らずに充てはめているのかもしれない。そういった意味では、ライトノベルの登場人物は、読み手の数だけ、無限に広がる。年齢を重ねるほどに、実際の人生で他人との出会いが多くなるほどに、小説の楽しみ方は広がっていく。
「君のすい臓」では飲酒、「君は月夜に」では喫煙。PTAの推奨図書には向かないかもしれない。しかし、内容はとんでもなく素敵に王道で、結末に至るまで本当に素晴らしい。テーマは死なのだけれども、未来に向けて前を向いて歩いていこう、幸せに生きていこう、という気持ちが高まってくる。自分の大切な人が幸せになっていくことの、幸せ。作者の「あとがき」も素晴らしい。そして何よりも、息子がこういった良い本に出会えたことが、嬉しい。