秘密結社Ladybirdと僕の6日間 喜多川泰

秘密結社というタイトルからして興味深い。340ページは長い方だろうが、少年一人が自分の人生を創造することを学ぶ過程だけではなく、教える側の大人たちの物語でもある。そして、いわゆる成功を掴みつつも、あえて全く違った方向性へと新しい挑戦を迎えようとする大人たちも格好良く描かれている。それが「世界を変えること」につながるというのだから、たまらない。

仕事について「他人との約束を守ること」、勉強は「自分との約束を果たすこと」と定義するのは面白い。それを、相手(自分?)の期待を上回るようワクワクしながら取り掛かること。ときにはつらいと思うかもしれないが、それらは本気の「一日」の積み重ねである。今ここにあるのは今だけ。本気の大事さが伝わってくる。

幼虫から成虫になるには、蛹の期間がある。成虫になって世の中を自由に飛び回るために必要なことを、未来視点で考えてみる。今のこのツライ体験は、未来の自分にとっては必要な糧だったと思える、という。そんな、恋い焦がれる「未来の自分」を真剣に想像して、少しでも近づきたい、と思えること。努力はツライ繰り返しではなく、遠方の恋人に会いに行くような、心の高揚を覚える。

高校生男子のヒト夏の青春体験が詰まった物語だが、登場する大人たちの一人ひとりに成長の物語があるのだろう。成虫になった天道虫たちはどこへ飛び立って行ったのだろうか。そんなスピンオフ続編も、ぜひ読んでみたい。

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