「結婚は、ふたりでひとつのトランクをふたりで引っ張っていくようなもの。ひとりじゃ重くて運ばれん。」佐賀の「がばい(すごい)」ばあちゃんの言葉は、素晴らしく、心に染み入る。発行されたのは2006年、すでに随分と前のことだけれど、その時期は結婚した当時にも重なり、今でも、思い出したように繰り返し読み続けている。
作者の島田洋七さんは、落語家であり、漫才ブームを作った、とも紹介されている。漫才コンビを形成したのは1975年だそうで、私たちの世代とは少し離れているので、あまりご存知なかったのだが、「佐賀のがばいばあちゃん」シリーズを読む限り、とても楽しい方のようだ。こうした書籍から入るファンの層のほうが、多いのではないか、と思う。
第三弾となる本作品は、著者とそのご婦人との、結婚生活を中心として描かれている。駆け落ち、貧乏漫才修行、東京進出、栄光と挫折。なんども挫折しては、佐賀に戻って、暖かく、かつスパイシーな言葉をかけてくれる、「がばいばあちゃん」のような存在は、羨ましく思えてくる。心のセーフティーネットとしても、戻れる田舎(実家)がある、ということは、心情的にも、とても大事なこと、だと思えてくる。
「がばいばあちゃん」のような、心の支えとなるような人を持つ人は、きっと、困難があっても、それを拠り所の一つとして、何度でも立ち上がっていけるのだと思う。「そういう人がいたらなあ」という一方的な考えから、「(誰かを支えてあげられるような)そういう人になりたい」という考えに変わる自分に気づかせてくれるのも、本書の良いところだ。