ブックオフで購入したものだけれど、本体価格1,000円+税金が定価だけど、中古で610円も支払った。これは、いつもの100円コーナーではなく、自己啓発書コーナーで何気なく立ち読みをし始めたら止まらなくなり、つい購入するに至ってしまった案件である。その後は近くの喫茶店に入って読み始め、たまたまカバンに入れていた赤鉛筆で線引きをしながら(もう買取に出せなくなってしまう)、100分も経たずに読み通してしまった。
NHK「100分de名著」ブックスというのは、孔子の「論語」やアインシュタインの「相対性理論」など、読み始めると迷路に突入しそうな難解なテーマを、分かりやすく紐解いてくれる、良いシリーズだ。テキスト雑誌だと500円くらいだけど、単行本になると1,000円になる。週末に喫茶店で読み始めると、何となく教養が高まり、休日を有効活用できたような気分にもなり、夜もよく眠れるから、不思議である。
ドラッカーは1909年に、オーストリアのウィーンで生まれた。幼少期に第一次大戦が終了、人口6,000万人を誇っていたオーストリア・ハンガリー帝国は解体、人口は600万人になった。500年も栄えたハプスブルグ家、大国の盛衰という大イベントを経験し、「社会に起こっていることを見て伝える人」になろう、と考える。中心に「人」がいる社会、組織をテーマに、そのあり方の模索を始める。
経済至上主義への警告。「経済のために生まれて、経済のために死ぬ。そこには、人間というものが存在しない。」 資本主義も社会主義も、追求することは経済的な利益であれば、同じものだ、と言い切る。生産手段を労働者が奪い取ったマルクス主義も、人々の求めた形にはならず、「脱経済至上主義」の受け皿としては、ヒトラーが提唱した国家社会主義、ファシズムしかなかった、と説明する。
「民主主義」に対する意見も。イギリスやフランスは、民主主義を自分たちの手で勝ち取ったのに対して、日本、ドイツ、イタリアは、日本は「上から降りてきた」民主主義のため、民主主義への愛着が弱く、そのために簡単にファシズムへ走ってしまった、とも解説している。
一方で、ドラッカーは日本を随分と気に入ってくれていたようだ。日本が異文化を取り入れることに長けている点を褒めている。他国は西洋文化を取り入れるに、自分の国を「西洋化」したが、日本は西洋文化を「日本化」した、という。大化の改新では中国の律令制度を取り入れ、明治維新では西洋文明を吸収したが、日本固有の文化やアイデンティティを失うことは無かった。日本人は、形態としての全体を知覚する能力に優れている、のだそうだ(と言いつつ、半分くらいしか理解できていないけど。)
「マネジメント、エッセンシャル版」の、さらにエッセンシャル版のような本書。「もしドラ」も読みやすかったけど、本書はドラッカーの生い立ちや、日本との関係性、対談集なども挿入されていて、さらに気軽に手に取ることができる(だからこそ中古なのに高い!)。本棚の目に止まるところに並べておいて、会社組織に対する疑問が生じたときとかに(いつも生じている)、気軽に手にとって、ページをめくりたい。