たそがれ清兵衛 (藤沢周平)

藤沢周平さんの作品。映画にもなった(真田広之さんが主演)「たそがれ清兵衛」をはじめとする、全部で8作品の短編集だ。どの作品の主人公達も、江戸時代の地方公務員の下級職員(失礼な言い方ですみません・・・)といった役職で、日頃はあまりパッとしないけれども、それぞれが剣術の達人だったりして、いざ!という時にはきらりと光る才能を披露し、難事件を解決へと導いていく。

下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮してはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣が黙っちゃいない(宣伝文章のまま)。

お家の一大事!とあるが、本人の日々の生活からは遠い上層部の権力争いに巻き込まれた、とも読める。悪玉で多いパターンは、藩の財政を立て直した一方で、賄賂などで自制力を拡大した悪代官など。洪水や飢饉で枯渇した農村を立て直したが、その後で高利貸しの返済で、民衆が苦しんだり。民衆を餓死から救って命をつないだ点は、悪玉の方だって、もっと評価されても良いような気持ちがする。

映画版の「たそがれ 清兵衛」 は、小説(ほんの数十ページ)を膨らませたような内容になっているようだ。物語の最後のほうで、春の訪れを予感させる山麓の風景の描写はとてもあたたかくて、清兵衛たちの幸せな今後を予感させてくれる。 それぞれが短いので、藤沢周平さんの入門としても、気軽に読みやすい。

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