【埼玉県北葛飾郡】杉戸天然温泉 雅楽の湯(うたのゆ) 素晴らしい泉質 ほのかな鉄の香り

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」杉戸天然温泉の釜湯につかりながら思い出すのは、方丈記の始まりの一節でした。

五右衛門風呂のような釜湯にある、小さな源泉の出し口から、新鮮な温泉のお湯がトポトポと流れ込んできます。釜湯それ自体は変わらないように見えても、小一時間すれば、中のお湯はすっかり入れ替わっているはず。人間の体や心から宇宙の形まで、毎秒のように、少しづつ変わっています。

露天風呂は、杉などの木々の囲いに囲まれています。釜湯から投げ出した両足を、二本の杉の木の方向に合わせると、足の指先から空の彼方まで、杉の木を通してスーッと繋がっているような気持ちになります。

杉戸温泉の建屋は、農地に囲まれています。周囲の道路から離れているので、聞こえてくるのは、木々を通る風のざわめきと、トトト、と音を立てて釜湯から溢れ落ちるお湯の音だけ。人の体も、心も、この釜湯と同じように、自然と満たされながら、余分なものが少しづつ流れ落ちるような。掛け流しの温泉に入って目を閉じると、宇宙の流れというか、自然の摂理を感じます。

泉質は、少し塩っぽいナトリウムー塩化物泉で、薬46度の源泉をそのまま湯釜に注いでいるそうです。もともとこの地は海だったそうで(とはいえ、約6千年前!)、海水の塩分を豊富に含んでいるとのこと。溶存物質が16グラム/1000グラムと、かなり成分の濃い温泉です。かすかに鉄の香りがします。鉄分が空気に触れるときに酸化するので、透明な水が茶褐色になるそうです。ph7.3と中性。少しだけ、青森県の酸ヶ湯温泉を思い出します(酸ヶ湯温泉は強い酸性の温泉です)。

濃厚で素晴らしい泉質。「ニフティ温泉で5年連続全国1位」を始め、大変に評価の高い温泉です。平日ということあり、露天風呂もとても空いていて、ゆったりと、気持ち良いお湯を楽しむことができました。次は家族と一緒に来たい、と思います。でも、休日はやっぱり、混雑しているのかな。。

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