第155回芥川賞受賞。やっと図書館で予約の順番が回ってきた!
主人公である36歳の女性は、コンビニのバイトを18年間も続けている。周りからは奇異の目で見られつつも、ここでの仕事が、彼女にとって、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。「普通」とは何か?ということを、読者に対して突きつけてくるような、衝撃的な話題作だ。2016年7月に第1刷発行、この本は同年8月に第4刷発行のものだ。
コンビニエンスストアの業務の実態が理解できる。朝の朝礼、商品の発注、新商品の棚揃えなど。店員さんたちの仕事ぶりも観察できる。主人公の女性には、店内に散らばっている、無数の音が聞こえるという。その音たちから情報を拾い上げながら、テキパキと新商品を棚に並べ、売れているものやそうでないものの品揃えをする。お客さんの目線を読んで、ファーストフードのショーケースからホットドックなどを取り出す準備をする。お客さんが悩んでいると見れば、一歩引いて待つようにする。完璧なコンビニ店員的な動作が描写されている。
主人公に容易に感情移入できるような作品ではないかもしれない。その一方で、主人公のつぶやいた、「コンビニはお客様にとって、ただ事務的に必要なものだけを買う場所ではなく、好きなものを発見する楽しさや喜びがある場所でなくてはいけない。」という言葉には、なるほど、と思った。