花粉症の季節がやってきました。日が長くなってきたのは良いことだけれど、この季節の外出には、マスクが欠かせない。コロナウイルス騒ぎもあって入手しづらいマスクだけれど、花粉症の患者さんにも、ぜひ優先的に配布してもらいたい。
小説では、秋から冬が舞台になる。天明三年(1783年)。小兵衛65歳、大治郎が30歳、おはると三冬が25歳、孫の小太郎が2歳。歴史上ではこの年、浅間山で大噴火があり、死者約2万人。さらに「天明の大飢饉」が深刻化。なかなかに波乱を含んだ年だけれど、小説の世界では穏やかに四季が巡っている。
「罪ほろぼし」では、実家の近くの様子が描写されていて、少し嬉しい。「砂村の八幡宮というのは、深川の富岡八幡宮から東へ十二町(11町が1,200mなので、1,300mくらい)ほど行ったところの海浜にあり、小ぢんまりとした社殿がある。ここが、富岡八幡宮の旧地だったとかで、砂村の元八幡宮とよばれていた。門前町も何もない、一面の葦の原と松林に囲まれ、正面の土手道の向うは江戸湾の海である。」
つまり、とても寂しい所、江戸の外れであって、若い永井源太郎が弓の練習に専念するには、とても良い場所だ。今では東西線の南砂町駅があり、大きなショッピングセンターがあるけれど、夕方になると、何となく物寂しい風が、当時は無かった荒川(昭和になってから開削された)の方から吹いてくるような場所でもある。
後書きにある、常盤新平さんの解説も面白い。「私たちの妻や娘たち」と「おはるや三冬」との間に、「天と地のひらきがあると私たちは諦めの境地に達しつつ」。男女平等の風を受けて、女性が競馬や酒場にも進出する昨今(後書きの作成時)。現代の女性は、男性がやることは、すべて後を追っていくのだそうだ。その逆もあるのが最近だ。嫁さんが通っている茶道やピラティスも、楽しそうに見える今日この頃です。