輸入ウイスキー 1,000円以下の美味しい10本(後編)

安くて美味しい輸入ウイスキー。後編を紹介します。

マクレーン(スコッチウイスキー)

「酒のカクヤス」で発見した謎のスコッチウイスキー、マクレーン(MacLean)です。マックリーン?マックリン?ラベルデザインを見ると、前編で紹介した「アトーニー」的な不思議さも感じられます(別会社です)。「スコッチウイスキーが690円?」という商品札が、「ロック(690)で美味しい!」というシャレ付きで、お店の棚に並べられていました。

もしかして、数々の蒸留所の所長を務め、有名な世界ウイスキー大図鑑の監修者である、ウイスキー評論家のチャールズ・マクレーン(Charles MacLean)氏のプロデュースウイスキー灰色モデルです。・・・?

または、とても千円では買えない、普通の(失礼)高級ウイスキーMACALLAN(マッカラン)インスパイア系商品なのでしょうか・・・?

味の方は、さほどに安っぽくはなく、そこそこに軽めのスモーキー感があります。ほのかなにオークの香りも。店舗では、ハイランドクイーンと並べて売られていました。ハイボールで飲みます。普通に美味しいですね。

輸入者は「アクサス株式会社」。ラベルの住所記載は港区南青山ですが、そこは東京の営業所で、本社は徳島県にある物流会社のようです。ウイスキー輸出入も積極的に展開中。2019年7月の徳島新聞に、以下の記事がありました。JASDAQにも上場している会社で、株主優待(10万円相当)に入れば、毎年8月にウイスキーが貰えます。

「徳島県内流通大手のアクサス(徳島市)は、神戸市の六甲山上に蒸留所を設立し、2020年11月からウイスキーの生産をスタートさせる。自社で洋酒の蒸留事業に乗り出すのは初めて。国産ウイスキーブームを背景に、国内外に売り出すほか、蒸留所で見学ツアーを受け入れたり、試飲できるスペースを設けたりして観光需要の取り込みも図る。」

ボトルには、”rare reserve “と彫られています。レアリザーブ。あと、”Produced of Scotland”という彫り文字も。”Under our Master Blenderr’s Supervision” とあります。これはいよいよ、チャールズ・マクレーン先生のご指導を受けた製品!と考えても良いのでしょうか。

会社のHPにも、マクレーン(マクリーン?)の商品紹介は、ありません。このミステリアスな雰囲気を味わうためにも、ぜひご挑戦・・・じゃなかった、ご賞味ください。

香り:ややスモーキー? 2.5
味わい:アルコール感やや強 2.5
ボディ:ハイボールに合う度 3.0
銘柄ミステリアス感:5.0
アルコール度数:40度
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グレンスタッグ(スコッチウイスキー)

“The Glen Stag”「峡谷の鹿」という意味を持つスコッチウイスキー。原料のモルトは100%スコットランド産バーレイ(大麦)、自社製の特別なシングルモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンド。アメリカ産のホワイトオーク樽で3年以上熟成、と記載されています。

3年以上の熟成をはじめ、これらの宣伝文章は、英国法に基づいて「スコッチウイスキー」と名乗るための必要条件です。昨年(2019年)には、ちょっとだけ緩和されたようですが、厳しいルールによって、スコッチという英国ブランドは、守られているのですね。(日本のウイスキー法も、見習ってほしい・・・)

ちなみに、英国スコッチウイスキー協会では、“Whisky”と”Whiskey”の違いを紹介しています。

「モルトウイスキー」、「グレーンウイスキー」というのは、ウイスキー原酒の二大品目です。原料で区別すれば、モルトウイスキーは大麦の麦芽だけを使い、グレーンウイスキーはトウモロコシや小麦などを麦芽に加えます。蒸留方法にも違いがあり、樽ごとに個性が生まれます。両者を組み合わせたブレンデッドウイスキーは、酒造メーカーごとの特徴が出ています。

我が家の酒蔵として愛用させていただいている「酒の河内屋」で、なんと699円(+税)であったことはさておき、開封、氷を浮かべたグラスに注ぎます。穀物の新鮮な香りがします。ベースとなっている、スコットランド産大麦でしょうか。香りの割には、味わいの方は、さほどに強くはない印象です。ほのかな甘さも感じます。スモーキーさは、あまり感じません。飲みやすいお酒です。

蛇足ですが。「アメリカ産のホワイトオーク樽で熟成」と書かれていますが、アメリカでバーボンに使用した樽は、米国のバーボン法により、バーボンとしては再利用できないので、低価格で輸出されているそうです。再利用することで、新しい価値が生み出されるのですね。

香り:爽やかフルーティー感 4.0
味わい:やや甘口感 3.5
ボディ:ライトな飲みやす感 4.0
アルコール度数:40度
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ティーチャーズ・ハイランドクリーム(スコッチウイスキー)

学校先生たち用のウイスキー!と誰もが勘違いしてしまう(私だけ?)ネーミングの、スコッチウイスキーです。1832年、英国のウイリアム・ティーチャーさんが、グラスゴー(スコットランドの街の名前)に立ち飲み屋を開業。産業革命の成功により、グラスゴー市の人口が倍増したのをきっかけに、20店舗へと拡大。ウイリアムさんの死後、二人の息子たちが受け継ぎました。

「ハイランドクリーム」というのは、まるでクリームのような滑らかな舌触り・・・という意味では無いようです。英単語”cream”という意味には、「最上の部分、最良の部分、神髄、粒よりの人、選び抜かれた精鋭」といった響きがあります。ハイランド産の特別なモルト(大麦の麦芽)との配合により、最高の品質に昇華させた、という気持ちが込められているようです。

美しい茶褐色の液体を、トポトポと氷を浮かべたグラスに注ぎます。爽やかなスモーキー感が漂います。熟したリンゴや、洋梨のような味わいです。しっかりとしたコクもありますが、氷に解けると、優しいのど越しになります。サントリーが自信をもってアピールする気持ちが分かります。コスパの良い、美味しいウイスキーです。

輸入販売元のサントリーの紹介サイトが見やすいです。大泉洋さんと高橋マリ子さんによる、楽しいCMも見れます。軽めのハイボールを飲みながら鑑賞しました。製造元のサイト(英語)の方は、英国の重厚な雰囲気が出ています。こちらはロックで。ディスプレイからスモーキー感があふれるような気がします。

香り:スモーキー感 4.0
味わい:ほのかな甘口感 3.0
ボディ:そこそこ重厚感 3.5
アルコール度数:40度
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メーカーズマーク(バーボンウイスキー)

ジャムのように真っ赤でトロリとした「封ろう」が特徴的な、本場アメリカのバーボンウイスキーです。ふるさと納税の返礼品としていただきました。コンビニでは千円くらいで、200mlの小瓶も売っています。このページでは「高級品」の部類です。

クラフトウイスキーとは、何でしょうか。明確な定義は無いようですが、地域ごとの特色(麦の種類、天候、水など)を大事にして、職人たちによって丁寧に作られる、個性的なウイスキーのようです。「唯一無二のハンドメイドバーボン。」輸入販売元であるサントリーの商品紹介サイトを見ると、ケンタッキー州の小さな田舎町の風景、蒸留所の景色が動画で楽しめます。(俳優、小栗旬さんの写真もあります。)

バーボンとは、トウモロコシを主原料(51%以上)とするウイスキーで、アメリカのケンタッキー州を中心に作られています。幅広のウイスキーグラスに、氷を浮かべて、丁寧に注ぎます。広大な牧草地帯の、爽やかな風が感じられるようです(コロナ対策の喚起で、窓が開いていました)。とても良い香り。優しいトウモロコシの甘味が感じられます。口当たりは、とてもまろやかです。ウイスキー独特の、バニラの風味も楽しめます。

アメリカのメーカーズマークのサイトでは、見学ツアー(酒造巡り?)も受け付けているようです。日付と人数をクリックして、手軽に申し込めそうな雰囲気です。米国はコロナ禍で大変な状況ですが、収束の兆しが見えたら、本場ケンタッキーの蒸留所巡りを目的とした海外旅行も、楽しそうですね。

香り:柑橘系の香り感 3.5
味わい:ふっくらバニラ感 4.5
ボディ:滑らかな柔らかさ 4.0
アルコール度数:40度
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アーリータイムズ・ブラウンラベル(バーボンウイスキー)

バーボンウイスキーが続きます。「アーリータイムズ」のブラウンラベル。セール時でしたら、千円くらいです。アサヒビールが輸入販売する、世界的にもメジャーな銘柄です。

1783年に終結したアメリカ独立戦争では、フランスのブルボン朝がアメリカ側に味方し、勝利に貢献しました。これに当時の大統領(ジョージ・ワシントン)が感謝を表して、ケンタッキー州の一部を「バーボン郡」と命名。ケンタッキー州で生産されたコーン・ウィスキーを「バーボンウイスキー」と呼ばれるようになったそうです。

「アーリータイムズ」は、昔ながらの製法(Early times Method)で作る、という意味を込めて、ケンタッキー州アーリータイムズ蒸留所で作られたそうです。「イエローラベル」と「ブラウンラベル」があります。イエローが原酒で、本商品(ブラウン)はブレンドを経ています。

サイトの公式な歴史紹介を見ます。1920年代、米国で禁酒法が施行され、多くの蒸留所が存亡の危機に瀕しました。そのとき、従業(信念の男)が「ブランドを守るべく意を決して私財を投げ打って、秘密の倉庫に隠すことで、伝統を途切れさせなかった」と記載されています。米国に伝統的な蒸留所が少ない理由は、禁酒法時代に、取り潰されてしまったから、とも言われています。

一方で、ウィキペディアには、別の見解があります。「医療用ウイスキーの表示を行うことで、法律の適用が免除された。」とも。さらに英語版のウィキペディアには、「禁酒法で除外品になるまでは、さほど有名(popular)では無かった」とも書かれています。

公式サイトには、そのような記載は無く、ウィキペディアを直接裏付ける記事は探せませんでしたが、The Whiskey Washという英語の情報サイトに、アーリータイムズの歴史が別の視点で記載されています。それによると、禁酒法の時代、医療用ウイスキーの販売許可を所有していたブラウン=フォーマン社(Brown-Forman)は、アーリータイムズ倉庫から全てのボトルを買い取り、自社の倉庫へ移管し保存。禁酒法の廃止後に、ブラウン=フォーマン社で、製造を再開したそうです。この時、少しメソッドを変えているような表記もあります。

いずれにしても、開拓時代、禁酒法、大恐慌に戦争など、過酷な時代を生き抜いてきたアーリータイムズは、「大したものだなあ」と思います。

ところで、当時の禁酒法自体は「販売を禁じ」ましたが、飲むのは自由。直前までに裕福な人々は良質なお酒を買い占め、高値でブラックマーケットで流通。医師の処方箋があれば「医療用」としてウイスキーが買えたり(アーリータイムズ商品も「医療用」として認定されていた、という記事も)、工業用として蒸留酒が堂々と輸入されたり、田舎では密造酒が盛んに。

歴史というものは、その時代を生きて、肌で感じていないと断言できないのかもしれませんが、道徳を守って風紀を取り締まろう(当時も移民問題が背景に)という目的で始まった「禁酒法」は、「米国のお酒の質を著しく落とした」として、不評なようです。

さて、サンガリアの強炭酸水で割って、ハイボールにして飲んでみます。炭酸がシュワシュワと勢いよく弾けて、オーク樽の香りが広がります。トウモロコシの甘味を感じます。口当たりは、まろやか。ブラウンラベルは、主に日本人のテイストに合わせてブレンドされたそうです。

アーリータイムズの隣に映っているのは、モンゴルから来たお客さんにいただいた、革製の壁飾り。ブラウンラベルに合いそうな、部屋の中でブラウン色のグッズを探した結果です。今度はイエローラベルと飲み比べてみたいですね。くまのプーさんが、人待ち顔をしながら、こちらを見ているようです。

香り:フルーティー感 3.5
味わい:日本人好みの甘さ感 4.0
ボディ:格段に飲みやすい感 4.0
アルコール度数:40度
「アーリータイムズ ブラウン」紹介へ(amazon)
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