ハッチとマーロウ(青山七恵)

双子の女の子が11歳の誕生日を迎えた日から、物語は始まる。「今日でママは、大人を卒業します。」と言われて、母親は二人が呼ぶには「ダメ人間」になってしまう。

「いつなんどき島流しにあってもいいように、基礎英語を聞いて、一年後には英語をカンペキにしゃべれるようにしておくこと!」ママは冬眠モードに入ってしまう。

シングルマザーの家庭環境だけれど、暖かくも不思議な親戚たちの支援があったり、ママも売れっ子?の作家のようで、悲壮感は感じられない。育児放棄の話でもない。、二人は早起きするなど、生活スタイルを見直さざるを得ないようになる。

348ページに及ぶ内容の大半は、双子たちによる一人称で語られる日常だ。双子が個性について考えたり、バレンタインに好きな男の子にチョコをあげたり。「小泉くんが小泉くんだから好きなの!」

女の子視点の文章なので、中弛みするような話もあるけれど(失礼)、他愛のない日常のやり取りや言葉たちが、物語のクライマックスへの伏線になっていたりする。

異色テーマの作家で気難しいママは、映画のロッキーが好きで「人生ほど重いパンチはない」が哲学だけど、物語に一貫しているのは、人を好きになること、のような気がする。肩が軽くなるような、前向きな読後感を残してくれた。

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