コロナウイルスの影響により、地元の図書館の再開の目途が立たない5月の半ば。借りている本の在庫も底をついたので、ブックオフへと探しに行くと、歴史小説の100円コーナー(侘しい)に、比較的キレイな状態で「剣客商売」シリーズが並んでいた。運よく未読の続き刊があり、ウェブクーポン券も活用して(セコイ…)極めてオトクに購入できた。
さて、今回の13巻では、「剣客」という商売について、考えさせられることが多い。ただ単にメチャクチャ強くて悪者をバッサバッサと切り倒すだけでは、剣客を商売として続けていくことは難しい。御用聞きの弥七や徳次郎老中田沼意次、行きつけの料亭「不二楼」の長次や「おもと」、町医者で碁敵の小川宗哲など、剣客ビジネスのネットワークがなければ、とても生業として続けていくことは不可能である。
その上、人格の適正も重要だ。作品「剣士変貌」では、道場を構えて独立し、一国一城の主として剣術で身を立てることの難しさが語られている。作品「敵」では、人柄も剣術の筋も良い剣客だが、重なる不運に人生を翻弄される様子が語られる。どのような生き方が、その人物の行く末の幸せに結びつくのだろう。
表題作品「波紋」でも、家路にある大治郎の頭上を一筋の矢が疾り、「これも剣客商売の宿命か。」と語らせている。何とも、常に緊張した状態を求められる商売だ。しかし、今風に考えれば、業務用スマホを肌身離さず、いつ上司や取引先から緊急連絡がくるかもしれないビジネスマンの諸兄も、現代の剣客商売といえるのかもしれない(そんなことはない)。