消えたドンキホーテ

瑞江駅といえば、ドンキホーテですね。ドンドンドン。ふっくらとしたペンギンは、頼もしい庶民の味方です。でも、新しく瑞江に移り住もうとする人々にとっては、その存在は、あまり快く思われていないのかな…と、考えさせられるようなことがありました。

瑞江駅について、おさらいです。都営地下鉄新宿線の駅です。地上へのエスカレーターを上るとロータリーがある、よく見る光景の駅です。大きな幹線道路に面していないため、周囲は静かです。都営新宿線の開通時は「田んぼの真ん中に駅ができた」ような状態でしたので、街づくりも、地主の権利関係で立ち後れず、計画的にできたのかもしれません。

生活には便利な駅です。松や、吉野や、すき家、なか卯といった「四大牛丼店」や、ダイソー、セリア、ローソンストア100、フレックスといった「四大百均」があります。無いものといえば、センスのいいカフェと「マクドナルド」くらい。環七にぶったぎられている一之江駅とはエライ違いです。(でも、一之江にはコメダ珈琲があります!)

そのように便利な瑞江駅に、「ローレルコート瑞江パークステージ」さん、「ローレルコート瑞江エアリーステージ」さんという、2大新築マンションプロジェクトが立ち上がりました。瑞江駅から徒歩6分(公式による。空でも飛ばないと無理)、それぞれ地上11階建て、総戸数111室です。

このマンションのチラシを拝見したのですが・・・周辺案内図には、いくら探しても、「ドンキホーテ」の名前は、見つかりませんでした。

唯一の救いとしては、案内図の「1」の説明として「ラパーク瑞江」の写真があり、そこに「ドン・キホーテのペンギン」のイラストが確認できることです。

ドン・キホーテであることが分かります。

チラシを作るとき、きっと上司から「ドン・キホーテは品位上ダメだよ」と言われつつ、若手の勇気ある担当者が、真実を伝えるための苦肉の策として、あえて、ペンギンが見える位置での写真を掲載し、暗号的に読者へ伝わるよう努力した、とも考えられます。香港に自由を求める勇気ある民主活動家の姿を連想させます。

(ペンギンは入り口の正面で「すしざんまい」の広告的に両手を広げていますので、映らないように写真を撮ることは無理かもしれません。)

別のマンションのチラシを見てみました。「プラウド瑞江」さん。地上15階建て、総戸数99室。見上げるような高さ、徒歩1分という好立地で、最上階の4LDKは1億円以上。2021年11月に竣工予定です。

こちらには、「サミットストア」という白抜きの大文字の下に、一つフォントを下げて、ドン・キホーテの名前がありました。(サミットは地下1フロア分、ドン・キホーテは地上3フロア分、Seriaはその中の1店舗なので、広さ的にはドンキホーテを太字にすべきなのですが…。)

もう一つの物件のチラシを確認しました。こちらは、瑞江駅から徒歩7分(公式)、総戸数61室の「バウス瑞江」さん。2020年6月に竣工、すでに完売しています。「バウス瑞江」さんの周辺案内図には、「ドン・キホーテ」の名前が、ちゃんと掲載されていました。

ハイソサエティなミズエーゼたちにとって、ドン・キホーテは、あまり良い印象をお持ちでないのかもしれません。そう言われてみれば、地下のロッテリア前のフードコートには、平日の朝から、不思議な方々がリラックスしていますし、たまに店内放送でセキュリティ関係の隠語(※)が流れます。

(※)あなたが入店したときに、決まって同じ店内放送「従業員は○番窓口にお願いします」等が流れ始めたら、あなたは「要注意人物」として「目をかけられて」いるかもしれません。

付け加えますと、ドンキホーテ瑞江店は、「雑然としたジャングル」よりも、「田舎の整備された雑木林」といった印象です(どっちもどっちかも)。2009年7月、「ラパーク長崎屋、瑞江店」が「ドンキホーテ」になりましたが、「お子様からお年寄りまで楽しめる店舗」をモットーに、いわゆる「若者のジャングル」とは一線を画した、地元に馴染んだ経営を目指してスタートしました。

渋谷のような、ジャングルを想定して来た餓狼的なヤングのお客さんは「何か物足りない」と感じるかもしれません。そんな節度ある(?)ドンキホーテ瑞江店なのに、「無かったこと」のようにされてしまうのは、残念です。

同じ理由で、駅を囲むように存在するパチンコ屋(3店)も記載なし。広大な緑地を含む「瑞江葬儀所(火葬場)」も圏外です(そもそも遠い)。小さな公園は「これを見よ!」とばかりに緑色。

一方で、日頃は絶対に意識しないような、目新しい表現にも、気がつきました。「プラウド瑞江」さんの広告からの抜粋です。

「豊かな自然にあふれる瑞江エリアは、「東京」駅約12km圏の都心アクセスに優れた場所。都心性と自然環境が共存するバランスのよさこそ、新しい時代の暮らし方に適しています。東京駅約12㎞圏は良好な住宅地である目黒区自由が丘や世田谷区駒沢と同心円上にあり、都心へと気軽にアクセスできる魅力があります。」

瑞江が、自由が丘や駒沢と、同列に語られています。これは意外な視点だと思いました。

共通点を探します。瑞江駅の西側は、地区計画によって低層住宅街が整備されています。道幅も広く、少し歩けばテニス場もあり、目を閉じて耳を塞げば(心で感じれば)、どことなく田園調布の面影を感じるかもしれません。幹線道路から遠いため、確かに静かです。

それでも、瑞江の本当の魅力をアピールしたいならば、ドンキホーテを隠して自由が丘や駒沢を語るよりも、この地域ならではの温かみを、前に出してほしい、と思います。

例えば、夜になると(店じまいのため)メガ盛りにしてくれるケバプカーのネパール人お兄さん、唐揚げ・一枚上げ(鳥の胸肉)が絶品の駅前の揚げ物屋さん、ゴージャスな出で立ちでチラシを配る「おたからや」の姐さん。なぜここに?という住宅街ガールズバー(行ってません)。

瑞江では約10年間、家族で過ごしました。小さな通りや、一つ一つの公園にも、子供たちとの思い出があります。もし機会(※)があれば、もう一度住んでもいいと思える、素敵な街です。

(※)住宅ローン、子供の通学、ネコ可能・・・結構あるかも・・・

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