ヨレヨレ、ヘトヘト、テゲテゲ 疲れ果て?3作品

何となく閉塞感も漂う、アフターコロナの時代です。三五館シンシャがプロデュースする、交通誘導員ヨレヨレ日記(柏耕一さん)、派遣添乗員ヘトヘト日記(梅村達さん)、メーター検針員テゲテゲ日記(川島徹さん)は、そんな私たちに、喜多川泰さんとは別の角度からの元気を与えてくれます。

「三五館シンシャ」自体が、何とも不思議な出版社です。倒産、事業清算、再起。「新鮮かつ乱暴」に勇気をもって挑む力を持った唯一の出版社というプロフィールがキラリと光ります。HPの「書店の方へ」の文章は、独特のセンスを感じます。

交通誘導員ヨレヨレ日記(柏耕一)

日経新聞の広告欄に、とても目を引くタイトルの本を見かけました。著者の柏耕一さんは、波乱万丈な人生の末、73歳にして現役の交通誘導員。少し前の著書「武器としての言葉の力」も読みました。この作品とのギャップがすごいです。ご本人の痛ましくもほほえましい実経験に基づく、予想通りの面白い作品です。

当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます」というサブタイトル。抜群の命名です。ヨレヨレ姿のイラストもすごく良いです。柏耕一さんが勤務している警備員会社は、70歳以上の高齢者が8割を占めているそうです。最高年齢の84歳の「エロ爺さん」誘導員の話は傑作です。作者の背負っている高額な借金も、サラリとして紹介されつつ、交通誘導員としての日常が、日記形態で軽快に綴られています。

単なる第三者的なルポではありません。ご本人の経験に基づく、交通誘導という仕事に対する愚痴、不平、不満が満載です(笑)。作者本人がギャンブル好きなこと、奥様には頭が上がらないところなども、程よいスパイス感があり、好感が持てます。交通整理をする人に対して、平気で嘘をつく、悪意のあるドライバーたちを攻めつつも、「人は嘘をつく動物なのかもしれない。」と書いています。

長岡大花火大会へ2泊3日で警備の仕事に行ったときの、簡易トイレに関するハプニング(ちょっとダーティーな)。個性豊かな同僚、どうしようもない親方、監督者たち。喜びと悲しみ、ときどき怒り、そして切なさが、テンポ良く展開されます。

私自身も学生時代、幕張メッセの館内警備員のアルバイトをしていました。法定研修のあと、宝石関係の展示現場に入り、煌びやかな一流のお客さんたち、商社のビジネスマンたちを見て、灌漑深いものがありました。常に固定位置での、刺激の少ない立ちっぱなしの業務に飽きてしまい、数日で終えてしまいましたが、交通誘導の現場に入っていたら、また別の未来があったのかもしれません。。

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出版日:2019年7月20日
出版社:フォレスト出版(発行:三五館新社)
ページ数:208ページ
価格:1,430円 kindle unlimited(今なら30日間無料)

派遣添乗員ヘトヘト日記(梅村達)

サブタイトルは「当年66歳、本日も“日雇い派遣”で旅に出ます。」本書は、66歳を迎えたツアー添乗員(本職はライター)による、派遣添乗員の業務のに日常を綴ったコラム集です。「添乗員自身がなげく日雇い派遣、ほとんど憂鬱、ときどき喜び、生活と痛みのドキュメント」という説明のとおり、面白い内容で文体も読みやすく、最後まで一気に楽しめます。

ドタバタ的に楽しいコラムが多い中で、働くことの楽しみや、仕事の本質的なことにも言及しています。

渋滞にはまりそうになれば、早めに状況を把握し、ツアー参加者に説明して詫びる。旅行会社の担当にもすぐに連絡を入れ、状況次第で旅程を変更し、トラブルで参加者に及ぶ被害が最小限にとどまるよう心掛ける。「ツアーというものは、トラブルの連続。」渋滞、いちご狩りのいちごが不味い、滝が涸れている、桜が咲いていない・・・など。

そんなときでも、「自分のせいではない」と思っては仕方がない。参加者はツアーを楽しみにしている。その気持ちを受け止めて、どう対応するかが大切になってくる、と言います。

数々のクレーム対応で身に着けた3つの法則」には、なるほど!と思わせられます。凄腕バスドライバーや、伝説のベテランガイドさんの話も。ぜひ本書を読んで、確認してみてください。添乗員業務だけでなく、ほかの仕事にも役に立つ知識です。誰かに対して「感謝すること」の大切さも、再認識できます。

作者の梅村達さんは、他には著書が見当たらないようですが、塾の講師、ライター業などの経験もあります(喜多川泰さんに似ている?)。文体や内容のまとめ方を見ても、人に何かを伝えるときのコツを持っているようです。単なる一読の痛快コラム集ではなく、読み返してみる価値のある作品です。

「交通誘導員ヨレヨレ日記」ほどには悲壮感が無く、作者も莫大な借金、奥様との御意見の不一致(失礼)を背負っているわけでもなく、群馬の温泉地で、仕事を楽しんでいます。その秘密は「あとがき-火付きの悪いライター」をお読みください。

似たような読み物として、「添乗員の愚痴ばなし」という、amazonのkindle本があります。amazon のkindle unlimited(今なら30日間無料)に登録すると、無料で読めます。リンク先から著者のブログへも行けます。コロナ禍により、状況はかなり厳しいようですが、応援したいです。

書籍紹介:amazonの紹介ページへ
出版日:2020年2月20日
出版社:フォレスト出版(発行:三五館新社)
ページ数:204ページ
価格:1,430円 kindle unlimited(今なら30日間無料)

メーター検針員テゲテゲ日記 1件40円、本日250件、10年勤めてクビになりました

各家庭や事業所の電気メーターを確認して、ハンディ端末に入力し、請求伝票などを印字、郵便ポストに投函するお仕事です。

本作品では、犬に追われたり、狭い路地で手鏡を使いながら観測したり、雪の日、雨の日、大変な様子が描写されています。読み物として楽しい、シリーズ3作目です。

一方で、現実の話としては、どんな仕事なのかな・・・?と思い、求人サイトなどを確認してみました。

1.ガスメーターの検針員(千葉県の企業)
・業務時間 9:00~16:00、実働4~6h
・業務期間 毎月1~5日、実働3~5日
・月給40,000円、完全出来高制、1日150件程度 月/500件~600件程度

2.水道メーター検針員(東京都の企業)
・ 上下水道料金徴収事務業務の業務委託を受けている安定企業
・ 水道メーターを読んで専用端末へ入力する業務
・ 出勤は、15日~27日までの間で3日~12日
・ 1日3H~8Hで受け持ちの検針地区が終われば時間は自由
・ 月収例 30,000円~160,000円

厳しい条件だなあ・・・と思っていたら、これらはいわゆる「下請け企業」のようです。大手では「契約社員」として、ちゃんと募集していました。

3.ガスメーター検針員(東京ガス)
・ 保障給月給16万5000円以上+歩合 業績連動賞与年2回有
・ 勤務時間8:30~17:15、休憩時間12:00~13:00
・ 交通費全額支給、社会保険完備
・ 制服貸与、研修有
・ 試用期間2ヵ月/時給1300円

募集ページからは、小説のような悲壮感(?)は伝わってきませんでした。いずれはスマートメーター化によって無くなってしまう職業、と言われています。そんな仕事があったんだ・・・という、歴史的価値が生まれるかもしれませんね。

書籍紹介:amazonの紹介ページへ
出版日:2020年6月24日
出版社:フォレスト出版(発行:三五館新社)
ページ数:208ページ
価格:1,430円 kindle unlimited(今なら30日間無料)
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